ウェッジウッドを代表する名作といえば、なんといっても「ワイルドストロベリー」でしょう。

「ワイルドストロベリー」は、もともと1957年に発売された「ストロベリーヒル」を1965年に改良して発売されたものです。

「ワイルドストロベリー」の原型である「ストロベリーヒル」のデザインを考案したのは、ヴィクター・スキレーンとミリセント・ダブリン。彼らはストロベリーヒルを発表した1957年に、このデザインで英国工業デザイン協会のデザイン・オブ・ザ・イヤーを受賞します。(※1953年にデザインし、1956年に受賞したという説もあります)
現在ストロベリーヒルは廃盤となっていますが、発売された当時は、今のワイルドストロベリーと同様にウェッジウッドの中でも特に知名度の高いシリーズでした。
ところで、「ストロベリーヒル」のデザイナーの一人、ヴィクター・スキレーンの名前……どこかで聞きませんでしたか?
そう、昨日ご紹介した「フロレンティーン」シリーズと同じデザイナーなのです。
「ストロベリーヒル」「フロレンティーン」「ラニーミード」はいわば親戚同士のような感じですね。
ヴィクター・スキレーンは、1923年から1930年、そして1934年から1965年までの約30年間、ウェッジウッド社に在籍していたデザイナー&アートディレクターです。

ウェッジウッドのバックスタンプは、よく知られている「黒いポートランドの壺」の前に「緑のポートランドの壺」の時代がありました。ヴィクター・スキレーンは、この”緑壺”時代のウェッジウッド最大の貢献者の一人です。(もう一人は、彼の前にアートディレクターを務めていたジョン・ゴットウィン。彼もまた、1929年におきた世界恐慌後のウェッジウッドを支えた陰の立役者です。)

”英国陶芸の里”として知られるストーク・オン・トレントにあるフェントンの陶芸家の家で生まれたヴィクターは、若い時からその才能を発揮し、芸術学校在学中にもいくつもの賞を獲得します。
1923年にウェッジウッドのデザイン部門で、当時アートディレクターだったジョン・ゴットウィンの下で働き始めますが、1930年に再び美術の勉強をするために退職。しかし1934年にジョンが退職する際、彼の後任として再就職します。
ヴィクターはそこから約30年間、ウェッジウッドに在籍してデザイナー&アートディレクターとして活躍し、1965年に退職。人生をウェッジウッドに捧げていたかのように、退職した翌年1966年に他界しています。
そんな彼がウェッジウッドにもたらしたデザイン、「ストロベリーヒル」と「フロレンティーン」の特徴として、どちらも共通して「過去のパターンを参考にデザインされている」ということが挙げられます。
「ストロベリーヒル」は、創業者ジョサイアの時代に作られた最初のパターンブックに描かれていた図案から。そして「フロレンティーン」は1880年に初版が発表され、ヴィクターがその図案を修正して現在のデザインとなりました。以前ご紹介した「ラニーミード」も、ジョサイア時代のパターンブックに描かれていたホタテ貝がモチーフに使われています。

ウェッジウッドのデザインには、このように過去の図案を大切に受け継ぎ、現代のデザイナーが新しく息を吹き込むことで生まれたデザインが数多くあります。カリーニョの取り扱い食器としては、ハーレクインコレクションの「カッコー」や「ポルカドット」が、18-20世紀のパターンブックからインスピレーションを得てデザインされています。
2015年には「ワイルドストロベリー」誕生50周年を記念して、ワイルドストロベリーの原型となった(…つまり、ストロベリーヒルの原型になった)上述の図案をもとに、「ワイルドストロベリーアーカイブ」が発売されました。

デザインの復刻を度々おこなうウェッジウッド。ほかのデザインでも「前にも見たことがあるかもしれない」と思われるものを見かけたら、インターネットやウェッジウッドの過去のカタログなどで是非調べてみてください。何か新しい発見があるかもしれません。
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【お知らせ】
2020年12月30日から2021年1月3日まで、お休みを頂戴いたします。そのため、本年は今日が最後の更新となります。来年もどうぞよろしくお願いいたします。皆様、どうぞ佳いお年をお迎えくださいませ。
カリーニョ代表 加納亜美子