ウェッジウッドの創業は1759年。創業者はジョサイア・ウェッジウッド(1730-1795)です。
彼はとても筆まめな人物だったこともあり、沢山の手記を残しており、そのおかげか、ウェッジウッドに関する日本語の書籍の大半も、ジョサイアにフォーカスした内容がほとんど。
もちろん創業者の時代だけではなく、彼の子孫の時代にも沢山の魅力的なエピソードはあるはずです。しかし特にジョサイアに関する内容が多いのは、やはり手記の存在が多いのではないでしょうか。「記録することの大切さ」を感じさせられます。
さて、そんなウェッジウッド創業者のジョサイアには、陶磁器以外に情熱を燃やしていたものがあります。
それが、貝類。
ジョサイアは、かなりの熱心な「貝類研究者」としても有名だったのです。彼が何年にもわたって集めてきた貝類コレクションはかなり莫大なものだったようで、彼の手記には
”私は陶器に背を向けて、貝の引き出しのほうに顔を向けていました。
鑑定家になりそうな、切迫したあやうい状態にありました”
なんて言葉も残されています。
ジョサイアはクィーンズウェアやジャスパーウェアの研究、フロッグサーヴィスや装飾壺の製作に関しても、並々ならぬ情熱を燃やしていましたが、とにかく、彼に関する伝記や手記を読む限りでも”かなりの凝り性”だったことが想像できます。
そんな彼の貝好きな一面は、確実に食器デザインにも影響を与えており、たとえば貝のふち模様のある形は、ウェッジウッド窯でつくられた最初期のパターンのひとつです。
カリーニョの取り扱い食器のなかでは、「ドルフィン」と「ラニーミード」、「ウェイバリー」シリーズに、貝の絵柄を見ることができます。




「ドルフィン」と「ラニーミード」の貝模様は、どちらも共通してジョサイアが残した図案をデザインに使用しています。
このように、ウェッジウッドのデザインには創業者ジョサイア時代のパターンを継承し、現代のデザイナーが新しく息を吹き込むことで生まれたデザインが数多くあります。これは1950~60年代に活躍したヴィクター・スキレーンというデザイナーの功績によるものが多いのですが、彼に関してはまた別コラムでご紹介します。
あとは1988~1997年まで製造されていた「ウェイバリー」にも、ピンクの貝殻があしらわれています。


ジョサイアが活躍していた18世紀半ばは、ちょうど西洋においてロココ様式が隆盛していた時期。ロココ様式は、「岩」を意味するロカイユと、「貝殻」を表す「コキーユ」を組み合わせた造語で、これは17~18世紀の庭園に流行した、貝殻や自然の岩石を積み上げた人工洞窟(グロット)や噴水の台座などの装飾的デザインに由来しています。

画像出典:twitter)
東南アジアや南北アメリカから運ばれる珍しい動植物の洪水に、18世紀のヨーロッパでは「博物学の時代」といっても良いほど、珍しい植物や動物、昆虫などの収集熱が”異常に”高まっていきました。貝殻収集もその一つ。貝殻の知識を持っていることが教養の高さを表すことにもなっていたのです。
またホタテ貝は「豊穣の象徴」であり、ギリシア神話のヴィーナスのアトリビュート(持物)としても有名で、ロココ様式の次に流行した新古典主義(ネオクラシカル)のデザインでもよく使われます。


ウェッジウッドの食器デザインを注意深く見ていると、たびたび貝殻モチーフが使われていますので、ぜひ探してみてくださいね。
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