陶器って何 ― 吸水性のある焼き物 ┃器物語

食器には漆器、ガラス、プラスチックなどがありますが、大部分を占めるのは焼き物と総称される陶磁器です。

中部地方で焼き物と言えば、セトモノ(瀬戸物)。
セトモノは近畿から東での呼び方で、西の地方ではカラツモノ(唐津物)と呼ばれます。
これは、古来愛知県の瀬戸、佐賀県の唐津地方で多く生産されたことから出た言葉です。
英語で焼き物のことを発祥国の名にちなみに、チャイナと呼ぶのに似ています。

陶器と磁器の違いとは?

焼き物は大きく、陶器と磁器に分類されます。

陶器と磁器の最も大きな違いは、原料と焼く温度です。

いずれも土を成形して焼きますが、陶器は酸化鉄など金属分を含む陶土を1200度で焼くのに対し、磁器は石を粉砕して粘土を加え、1300~1400度の高温で焼きます。このため器に吸水性はなく、透光性が出てきます。

このほか陶器質でありながら、磁器に近い高温で焼き締め、吸水性をほとんどなくした炻器があります。
常滑焼(とこなめやき)の朱泥の急須や備前焼、益子焼などで、洋食器ではストーンウェアといわれています。

では、どのような土が焼き物に適しているのでしょうか?

実はどんな土でもOKで、例えば皆さんのお宅の庭の土でも大丈夫です。しかし食器に必要な形、強度、白さ、薄さ、美しさとなると、それに適した良い土はやはり限られた場所にしかありません。

名古屋近辺は、世界でも珍しい良質の陶土の産出地です。今から200~300万年前、中部地方南部には大きな湖がたくさんありました。長い時間の経過の中で、風雨にさらされた岩石は細かくなり、不純物は洗い流されて、焼き物に適した優れた土が湖の底に堆積していきました。その後、火山活動や地殻変動で湖の底が隆起、瀬戸、多治見を中心とする大きな陶土の産地となったのです。

陶器が吸水性のある理由とは?

焼き物は、

  • 成形しやすい粘土成分
  • 溶けやすいガラス成分
  • 溶けにくい石物成分

―の3つのバランスでできています。

温度が上がるにつれ、ガラス成分が固い石物成分を取り込んでいくのですが、1200度程度で焼きあがる陶器では、まだ粒子同士のすき間が完全には埋まらず、すき間から水が浸透します。お茶の葉を茶筒に入れるとすぐいっぱいになっても、筒の底にトントンと衝撃を与えると隙間が埋まり、また茶葉が入るのと同じ理屈です。

強度的にも弱い分、厚く作られ、何回も使用しているうちにさまざまな成分がしみ込んで「味わい」が出ます。湯呑みや抹茶茶わんの持つ独特の味わいもここから生まれます。信楽、志野、織部などが陶器の代表です。

料亭では新しい陶器を使う際、水をくぐらせてから料理を盛り付けたり、一度煮るところもあります。
吸水性がある欠点はありますが、陶器には日本人が好む味わいがあります。
しかし品質的には吸水性のない磁器のほうが優れており、日常生活で使用頻度の多い食器には磁器が良いでしょう。

出典元:ノリタケ食文化研究会編『器物語 知っておきたい食器の話』2000年,中日新聞社,10-11頁

<このコラムについて>
コラム『器物語』は、2000年に刊行された『器物語 知っておきたい食器の話』の本文を転載させていただいております。
この書籍は、食器の知識がない人にもわかりやすく、かつ作り手(売り手)目線での、非常に興味深い食器の話が凝縮された良書で、私自身も学生時代に擦り切れるほど何度も読み込んだ、思い出深い一冊です。
本文の掲載をご承諾くださった株式会社ノリタケカンパニーリミテド様に心よりお礼申し上げます。
(カリーニョ代表 加納亜美子)

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