「世界は欲しいモノにあふれてる」のアフタヌーンティー

バーレイとスージークーパー
温かみのある英国のテーブルウエア

NHKEテレ番組「世界は欲しいモノであふれてる」大好きです。放送スタートから、待ってましたとばかりに目が釘付けの私。

いやー、この番組を見ていると、世界を席巻している「モダン・シンプル・モノトーン」スタイル推しの世の中において、まだまだ私と同じようにデコラティブ(装飾的)で伝統あるモノがお好きな方が、日本中にいらっしゃる(しかも年代若めで!)と何だか勇気づけられる番組ですね!先日の生放送では、「欲しい!」「大好き」「ステキ」とツイッターに1万件のつぶやきが投稿されました。

…と、思わず前のめりで話してしまいましたが、「世界は欲しいモノであふれている」(通称せかほし)とは、アンティークやカワイイ小物を求めて世界中から「美しいモノ」を探すバイヤーに買い付け同行する旅番組。その魅力やストーリー性あふれるモノたちを丁寧に紹介していくという、異色の番組です。

同じように骨董や身近な美しい小物を紹介するEテレ番組「美の壺」も私は好きなのですが、「美の壺」が年代高めで渋いのに対し、「せかほし」はロゴもミントブルーで、JUJUさん、三浦さんが出演する、音楽も、セットも若々しく可愛らしい雰囲気のとってもオシャレ極まりない番組です。

1月に放送された「アフタヌーンティー」編では、カリーニョもインスタフォローしている佐倉マナーハウスさんのオーナーで、英国アンティークバイヤーの岩谷好和さんがゲストとして登場しました。

紹介された陶磁器は、イギリスを代表するアジアティックフェザンツを製造する「バーレイ」と、日本人が大好きな「スージークーパー」のアンティークでした。

イギリスの陶磁器産地であるストーク・オン・トレントにある「バーレイ」
銅版転写の食器を製造しています。銅版転写といえば、スポードも有名ですね。銅版転写とは、絵柄を掘りぬいた銅版に、インクで色付けし、それをシートに移して素早く器に張り付け、こすることで転写する手法のことです。「器の版画(はんが)バージョン」と思えばイメージしやすいでしょう。

バーレイは一旦廃業しかかったものを、チャールズ皇太子の基金により救済されて再建したメーカーです。

スポードの「イタリアン」銅版転写の代表作です

そしてもう一つの「スージークーパー」。
20世紀初頭に世界初の女性陶器デザイナーであるスージーさんが立ち上げた工房です。英国アンティーク収集家で、料理研究家で、日本の断捨離シンプル生活の先駆けでもあった、私の敬愛する故・大原照子さんが、日本にスージークーパーを広めた第一人者です。

温かみのあるパステル調の手描きの1920年代~30年代のものが特に大原さんはお好きで、それに続けとばかりに、日本にはどっさりと20~30年代のスージークーパーのアンティーク品(正確にはヴィンテージ品)が輸入され、今やイギリスよりも日本の方がスージークーパーはある、といわれているほど。大原さんの先見の明と、情熱には驚くばかりです。

私が気に入っているスージークーパーは、「ドレスデンスプレイ」。
1936年に英国王だったエドワード8世が、妻のウォリス・シンプソン夫人に贈ったストーリー性のあるシリーズです。そう、エドワード8世、リアル「王冠よりも愛を選んだ」王で、離婚歴のあるアメリカ人であったシンプトン夫人といわば駆け落ちのように王座を退いたのですね。

私は、蒲生総さんが描いたこの物語のマンガ「Wallis(ウォリス)」が好きですね。2020年の3月、ヘンリー王子がすったもんだの末、王室離脱してしまったのも、いわばエドワード8世の「過去の黒歴史」と無関係ではないのでしょう。

ちなみに、ちょっと遊んでいる系のオシャレでイケメンエドワード8世よりも、彼の退位後に王位を継承した、吃音を克服し実直なジョージ6世(エドワード8世の弟)が、英国国民では人気です。イギリスの国難であった第二次世界大戦では、イギリス国民を守り切って勝利に導いた人物でもあり、偉大なるエリザベス現女王の父でもあるからです。エドワード8世は、一時期ヒトラーに共感していましたから、もしあのままエドワード8世の時代が続いていたら…と英国国民は考えているのですね。

バーレイも、スージークーパーも、どちらも日常生活用の食器です。スージークーパーのアンティーク品は、今では目が飛び出るくらい高価なものもありますが、どんなに高価な大島紬(おおしまつむぎ)でも、結婚式には着ていけないように、食器にも晴れ着、日常着のようなドレスコードがあり、これらはあくまで普段使いの食器です。

銅板転写のアジアティックフェザンツは、『赤毛のアン』でも日常用に使われています。そう、バーレイも、スージークーパーも、毎日の家族との食卓を楽しむための、「ハレの日」でなく「ケの日」の美しい食器たちなのです。

※シンプソン夫人とエドワード8世については、こちらのコラムでも詳しくお話しています。

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この記事を書いた人

玄馬絵美子

玄馬絵美子

薬剤師 / 「陶磁器de読書会」講師
カリーニョを運営する三姉妹の長女。薬局や病院で薬剤師として勤務し、現在子育て中のアラフォー主婦。株式会社アリベでは財務面を担当。カリーニョでは趣味で研究してきた東西の19世紀末~20世紀初頭の文化・様式・芸術の世界を紹介するコラム執筆、読書会を主宰する。
【これまでの実績】
全国のMR経験薬剤師が作る転職応援サイト『MRファーマシスト』にてマネーコラム連載。
新聞の文芸欄掲載多数。