ウェッジウッドの歴史を紐解くシリーズ③ジャスパー

「真似したくてもできない」ジャスパーの誕生秘話

ウェッジウッドの歴史には、「クィーンズ・ウェア」の存在が非常に大きかったことを、「ウェッジウッドの歴史を紐解くシリーズ」①と②でご紹介しました。

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ウェッジウッドの歴史を紐解くシリーズ① クィーンズ・ウェア
ウェッジウッドの歴史を紐解くシリーズ②フロッグ・サーヴィス

しかし、クィーンズ・ウェアは、もともとはクリーム・ウェアという硬質陶器(アーザン・ウェア)で、これ自体は他社でも生産可能なものでした。

ジョサイアが開発したやきものの中で、最も独創的かつ画期的なものは、フロッグ・サービスの完成と同年(1774年)に完成させた、「ジャスパー・シリーズ」といって間違いないでしょう。

講師アミーゴ
アミーゴ先生
「ジャスパー(Jasper)」とは、石英という鉱物の一種です。緑、黄色、青色、褐色などの美しい色彩のバリエーションがあり、ジャスパーという商品名はそこから取られました。

 

素地そのものに色を含有させるという画期的な方法で色付けされた青、薄紫、緑、黄などの地色の上に白色の優美な浮彫装飾(カメオ)を貼り付けたジャスパーは、それまでのヨーロッパの陶磁器にはまったくない美を示すもので、たちまちにしてヨーロッパの磁器市場を席捲(せっけん)しました。

ただ、言葉で言うのは簡単ですが、ジョサイアがジャスパーを完成させるまでに、実に数千回(文献によっては1万回)の試作品と4年の歳月がかかったとされています。

講師アミーゴ
アミーゴ先生
数千回の試作…ジョサイアのモノ作りに対する並々ならぬ執着と精神力が感じられますね。発明家としての彼の一面がよくわかる逸話です。ストーク・オン・トレントのウェッジウッド本社に併設されているウェッジウッド・ミュージアムでは実物を見ることができます。

 

ところで、ジャスパーで使用されるカメオ、よくよく見ると1700年代後半の産業革命時代の人々のようすではなく、古典的なデザインだというのがわかりますか?

実は当時、エジプトやポンペイ遺跡で大規模な発掘がはじまり、古典・古代への復興熱が高まっていました。その影響で、古代ギリシア・ローマの美意識が注目され、いわゆる新古典主義がもてはやされていた時代だったのです。


【レカミエ夫人】ジャック・ルイ・ダビッド、1800年作(ルーブル美術館蔵)
ポンペイ様式の家具と古代ギリシア風衣装という、新古典様式といえばこの絵。
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講師アミーゴ
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貴婦人たちの間では古代ギリシア風のドレスが流行し、金持ち子息はツアーにいく。古代ローマの発掘品とくれば、それは大変な人気となりました。

 

そんな時代背景もあったからこそ、ジャスパーにはギリシア神話に登場する神々など、古代ギリシア・ローマ美術が多く描かれているのです。

彼は完成の喜びを、ロンドンで働く生涯の親友で共同経営者(パートナー)のトーマス・ベントレーに伝えました。

その際、ようやく編み出したジャスパーの製法と素材の調合が万が一にも外部に漏れることを恐れて、わざわざ二通の手紙に分けて書いたといいます。

講師アミーゴ
アミーゴ先生
ケンタッキー・フライド・チキンも、オリジナルハーブの調合は、あえてそれぞれ別の場所でスパイスを製造することで、その調合比をシークレットにしているのだとか。何だかそれに似ていますね。
この技法は、200年以上たった現在も、変わることなく受け継がれているそうです。

 

 

1774年にジャスパーを完成させた彼は、それ以降、「ホメロスの壺」をはじめ、数々の壺をジャスパーで完成させました。そして1790年、ついにジョサイアの晩年の大作ともいえる「ポーランドの壺」を完成させます。

しかし、このポートランドの壺を再現する作業は、彼の想像をはるかに超える困難の連続でした。

 

講師アミーゴ
アミーゴ先生

ポートランドの壺に関しては、今回のコラムでは詳細を割愛し、また別の機会にご紹介することにしますが、もともとオリジナルのポートランドの壺はガラス製。このガラスの質感を出すことに大変苦労したそうです。

壺が完成するや、すぐに20個の発注がありました。やがて「ポートランドの壺」は、ウェッジウッド社の最高の品質を保証するシンボルとなり、230年経った今もなおウェッジウッドのアイコンとして君臨し続けています。


(出典:table LABO -テーブルラボ-

講師アミーゴ
アミーゴ先生
ウェッジウッドの歴史を紐解くシリーズと題しましたシリーズも、今回で終わりです。みなさまいかがでしたか?ジョサイアの苦難と栄光の人生と、その素晴らしい偉業を感じることが出来たなら幸いです。

 

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【このページの文章を書いた人】
加納亜美子(アミーゴ先生)

株式会社アリベ 代表取締役/『カリーニョ』代表
カリーニョを運営する三姉妹の末っ子。料理教室「一期会」を主宰し、洋食器輸入代理店でのセミナー講師、コラム執筆など多岐にわたり活動中。
通称:アミーゴ先生。これは、”世界中に沢山の友達が出来るような社交的な人になるように”と、父親が「アミーゴ(スペイン語で『友達』)から由来して名付けた「亜美子」にちなんだニックネーム。

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