【超簡単!美術様式の解説 #11】アールデコは「モダンな直線と曲線の幾何学模様」

1920年代のジャズエイジ(時代)に流行
現代にも通用するモダンな装飾

今まで超簡単!シリーズで、陶磁器を知るうえで不可欠な芸術・美術様式について時代順にお話してきました。
ゴシックバロックロココ新古典アールヌーボー(&世紀末芸術)ですね。

そして、最後に出てくるのが、アールデコです。

アールデコ(Art Déco。装飾の芸術、デコは英語でいうとデコレーションのデコ)とは、1920年~1940年ごろに流行した美術様式のことです。ちょうど、第一次世界大戦と第二次世界大戦の間の様式なんですね。この様式は、当時の先進国では爆発的に流行しましたから、日本ではちょうど、大正・戦前モダン文化を想像すると、そのままアールデコ時代となります。

アールデコのコンセプトは、「モダンな直線と曲線の幾何学模様」

アールデコのコンセプトは、ズバリ「モダンな直線と曲線の幾何学模様」です。

一つ前の美術様式であアールヌーボーの時代、特徴的なのは、植物のように柔らかく、優美な曲線を描いた文様。フェミニン(女性的)、繊細、優美、幻想的、清純、古典的なイメージがあります。

対するアールデコは、直線的で、すらりとしていて、曲線も多用されるのですが、全て幾何学模様です。アールヌーボーでは、曲線は植物のようにうねうねと伸びていって、非対称ですが、アールデコの曲線は、かっちりと定規で引いたような連続模様でシンメトリーです。男性的、都会的、モダン、洗練、のイメージがあります。

アールデコを象徴するマンハッタンのクライスラービル 出典:Wikipedia
幾何学模様の三角、四角、半円の連続模様が、アールデコらしさを表現している

アールヌーボーと、真反対のイメージであることがおわかりでしょうか?
ここまでガラリと流行って変わるものなのですね。

時代背景と密接にかかわるアールデコ

アールデコは、流行した時代に生まれるべくして生まれたような、私はそんな印象を抱きます。
1920年代というのは、いわゆるジャズエイジ。第一次世界大戦で疲弊しきったヨーロッパをしり目に、アメリカが雨後の筍(うごのたけのこ)のようにグングンと超高層ビルをマンハッタンに林立させる時期です。「グレートギャッツビー(邦題:華麗なるギャッツビー)」の時代そのものです。

出典:The Great Gatsby film ディカプリオ主演「華麗なるギャッツビー」

そんな無機質な高層ビル群に、幾何学模様のアールデコは非常にマッチするのですね。なんてったって、低コストのデザインですから。職人技のようなアールヌーボーでは、こうはいきません。

そして、ファッション。
20世紀初めから徐々にコルセットは廃れていきましたが、1920年代になるともう、完全にコルセットとはおさらばです。なぜなら、アールヌーボーの時代は、女性的な曲線美がもてはやされていましたから、まだコルセットの蜂腰(ほうよう)シルエットというのは、アールヌーボーの様式にマッチしていたのですが、アールデコのコンセプトは直線。女性のドレスラインも直線になり、長い長い女性のファッションの時代の中で、初めてローウエスト(低いウエスト)シルエットの時代になります。今まで、欧米のファッションというのは、基本的にジャストウエストか、ハイウエスト(高いウエスト)でしたから、ローウエストのシルエットは画期的で非常に斬新でした。

英国ドラマ「ダウントンアビー」より 出典:pinterest

アールデコ時代のファッションで、ファッションの歴史は一つの完成形をみせる。一つ前の芸術様式であるアールヌーボー以前のファッションで結婚式やパーティーに出かけると、「コスプレ」となるが、左のメアリーが着ているような紫のドレスと靴などは、現代のパーティーでも通用する。
中央のローズが履いているゴールドイエローの靴は、個人的に好きなシルエット。

今まで、ずーーっと大事にしてきた、細かく手の込んだ装飾美、コルセット、ウエストラインをすべてかなぐり捨てて、現代に通じる新しい価値観を生み出していったのです。
その後、このアールデコは今現在も使われているモダンな柄の元となっていますから、あたながもし、ある装飾や、美術様式をみて「ああー、モダンだなー」と思うのは、このアールデコ以降からのものです。アールヌーボー以前の様式の装飾は、どれをとっても「ああー、モダンだなー」とは思いません。どうしても、クラシカルなイメージがつきまといます。

私はいつも毎回、19世紀末~20世紀初頭にかけての文化が全て好きだ、とお伝えしていますが、それはこの時代の人々が、初めて私たち現代人と同じ感覚をもつわけで、その現代人の感覚を持つまでの葛藤が全ての文化分野にみられるからです。そうして、アールデコになると、もう私たち現代人と感覚が最終的にマッチする。ピタッとあうのですね。

ヴィクトリアンの時代や、ベルエポックの時代、アールヌーボーの時代、エドワーディアンの時代、といった1840~1910年代までは、旧来の文化とのせめぎ合いに翻弄されながらも新しい価値観を生み出す葛藤、みたいなので揺れ動いたりしている様子が文化全般からにじみ出ているのですが、1920年代のアールデコで、ようやく長い長い芸術様式の終着点を迎えるわけです。そうです、これで、現代人として一つの結論を出すのですね。

アールデコ時代の装飾、建築、芸術、音楽、文学、ファッション(特に男性用)を、約100年たった今の私たちが使っても何も違和感のない(古臭くない)のは、そのためです。そういう意味で、とてもとても重要な芸術様式でもあります。

次回からは、アールデコの特徴をよくとらえている具体例を紹介したいと思います。

\ 美術様式をもっと知りたい方はコチラ /

『陶磁器を彩る美しいモノたち』一覧

この記事を書いた人

玄馬絵美子

薬剤師 / 「陶磁器de読書会」講師
カリーニョを運営する三姉妹の長女。薬局や病院で薬剤師として勤務し、現在子育て中のアラフォー主婦。株式会社アリベでは財務面を担当。カリーニョでは趣味で研究してきた東西の19世紀末~20世紀初頭の文化・様式・芸術の世界を紹介するコラム執筆、読書会を主宰する。
【これまでの実績】
全国のMR経験薬剤師が作る転職応援サイト『MRファーマシスト』にてマネーコラム連載。
新聞の文芸欄掲載多数。