『ヨーロッパ宮廷陶磁の世界』-西洋陶磁史を学ぶ上で欠かせない一冊

私の主人は、本業以外にも独立開局塾という塾を主宰しています。
昨日、彼が紹介してくれた塾生さんのブログ記事に、

ビジネスでは「知っている」と「出来ている」は異なり、「出来ている」と「教えられる」はベースは同じでもレベルが変わってきます。

よく勉強した知識をより定着させ活かすためには、「学んだ知識」→「行動に移す」→「アウトプットする」

ということが大切であると、勉強に関する本やビジネスに関する書籍、また多くの著名人の方がおっしゃっています。
「第1回Kセミナー①」(独立開局への道のり)より引用 ※外部リンク)

という言葉が綴られていました。

昨日からスタートした、既読本の再読をアウトプットしていく「アミーゴの読書感想文」も、自分自身の知識を定着させるためのトレーニングの一環として、今日も朝から元気に更新していこうと思います。
(塾生さんの独立に向けての意欲溢れるブログ記事に、良い刺激をいただきました!)

残念なことに日本では、西洋の陶磁器についての入門書や概説書はきわめて少ない。

―――これは、1999年に出版された西洋陶磁史のパイオニアである故・前田正明さんの書籍『世界やきものの世界-誕生から現代まで』(平凡社)からの引用文です。

それから約7年後の2006年に、前田さんと櫻庭美咲さんが共同執筆して出版された『ヨーロッパ宮廷陶磁の世界』でも、

私は、昭和女子大学や鶴見大学をはじめ、さまざまな成人教育の講座でヨーロッパ磁器に関する講義を重ねながら、この領域における学習の難しさにたびたび出合ってきた。わが国では、ヨーロッパの絵画や彫刻を紹介する展覧会や著作物はじつに豊富にあるが、ヨーロッパの工芸や室内装飾、さらに生活文化にいたっては、いまだ十分に紹介されているとはいえない。
ところがヨーロッパの磁器文化は、まさにこうした情報が不十分なジャンルに属する。
(前田正明・櫻庭美咲著『ヨーロッパ宮廷陶磁の世界』角川学芸出版,2006年,櫻庭さんによるエピローグ(293-294頁)より引用)

と述べられています。

専門家ですら「学習の難しさ」を感じる、西洋磁器の世界。

では、この本が出版されてから10年以上経った現在は、どうなのでしょうか。
私は今もなお、たとえばテーブルコーディネートや日本の現代作家の作品を紹介する書籍や雑誌の刊行はあっても、西洋陶磁史(洋食器の文化・歴史)を学ぶことのできる書籍は相変わらず少なく、その世界を知ることが難しいことを実感しています。

だからこそ、専門家でなくても読みやすい西洋陶磁史に関する書籍は、非常に貴重で価値があるものだと思っています。(もっというと、だからこそカリーニョも、そんな西洋陶磁史を学びたいという方々に寄り添える存在になれたらという想いで、さまざまな陶磁器に関するコラムを執筆しています)

 

 

今井秀紀さんの『洋食器を楽しむ本』に対して、私は昨日のコラムで「教科書的入門書」という表現をしました。この本が入門書だとすれば、今回ご紹介する『ヨーロッパ宮廷陶磁の世界』は、グッと専門性が上がる内容になるため、『洋食器を楽しむ本』を読んだ後に、「もっと深く洋食器の世界を知りたい」と感じられた方への2冊目の教科書としておススメしたい書籍です。

この2冊があれば、洋食器を楽しむための知識はかなり網羅できると思います。私は学生時代には『洋食器を楽しむ本』を何度も読み返し、社会人になってから…特に洋食器輸入メーカーで勤めていた時には『ヨーロッパ宮廷陶磁の世界』を参考書として愛読していました。


(本にマーカーをつけることは賛否両論あるようですが、私は本を読むときに、迷わずフリーハンドで罫線を引きます。その罫線のひきかたによって、自分がその本を読んだ時どんな感動・興奮をしたのかが思い出されるきっかけになるからです。また、こうやってアウトプットをするときには、過去の自分の「感動ポイント」がとても参考になります。)

この本では、ヨーロッパの宮廷文化の中で愛されてきた陶磁器を軸として、マイセンやリチャード・ジノリ、ウェッジウッド、ロイヤルコペンハーゲンなどの今も現存する有名な洋食器ブランドの歴史が、その時代において何かしらの政治経済・文化的時代背景があった上で誕生し、そして同時期に誕生したブランドとも、何かしらの理由で国や地域を越えて「繋がっている」ということを理解できる内容が盛り込まれています。

そう……この本で紹介される有名ブランドの多くは、何かしらお互いに繋がりを持っているのです。
それは とある人物の逃亡・秘密漏洩によるものだったり、日本や中国から伝来してきたモチーフ(文様)の模倣だったり…

そうして、どんどんその繋がりのタテ糸をたどっていくと、西洋磁器のルーツには、日本や中国の磁器の存在が大きく関わっていたことに気づきます。

ヨーロッパにおいて「磁器」というものは、単に白さや強度において優位な特性をもつやきものの素材というよりも、はるかに多くの象徴的な意味をもつ素材だった。この特別な感覚は、大航海時代に貿易商人や船乗りらが、この磁器をまさに命がけで、はるか彼方の東方の未知の国から運んできたという、特殊な歴史背景に由来するものであった。
(11頁)

東洋からの磁器の影響は、すさまじいパワーでヨーロッパの伝統すら塗り替えた。
(12頁)

―――なぜ、ヨーロッパの人々がこれほどまでに磁器に魅了され、磁器にこだわったのか。それが知りたくなった方は是非この本を手に取り、西洋磁器史の世界につながる扉を開けてみてください。

西洋磁器の誕生から興隆までの一連の時代背景を知るには、非常に最適な一冊だと思います。

 

【アミーゴの読書感想文】
2冊目:『ヨーロッパ宮廷陶磁の世界』(前田正明・櫻庭美咲著,角川学芸出版,2006年)

こんな人におすすめ:
・『洋食器を楽しむ本』を読んだ後、さらに詳しく洋食器の世界を知りたいと思った方
・ヨーロッパの宮廷文化が好きな方
・越境する磁器の歴史の世界に触れてみたい方

 

【このページの文章を書いた人】 加納亜美子(アミーゴ先生)

株式会社アリベ 代表取締役/『カリーニョ』代表 カリーニョを運営する三姉妹の末っ子。料理教室「一期会」を主宰し、洋食器輸入代理店でのセミナー講師、コラム執筆など多岐にわたり活動中。 通称:アミーゴ先生。これは、”世界中に沢山の友達が出来るような社交的な人になるように”と、父親が「アミーゴ(スペイン語で『友達』)から由来して名付けた「亜美子」にちなんだニックネーム。

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