【第29回】『ダウントン・アビー』映画のここがすごい(1/?)

陶磁器を彩る美しいモノたち
待ってました!映画『ダウントン・アビー』
ファンサービス満載のドラマ版続編

 

今月から公開されている映画『ダウントン・アビー』(原題『DOWNTON ABBEY』)皆さんご覧になられましたか?

映画版公式ホームページはこちらのページをご覧ください

いやー、来ましたね。待ってました!の映画「ダウントンアビー」。言わずと知れた、世界で大ヒットした、大人気英国長編ドラマの続編です。

ご存知ない方に簡単に説明しますと、イギリスはヨークシャーにある大邸宅(いわゆるカントリーハウス)を舞台に織りなす、グランサム伯爵クローリー家一族とその使用人たちの、華麗なる英国貴族文化と、愛と、サスペンスと、英国式ユーモアにあふれた、キラキラ・ワクワク・ハラハラ・ジーンとする素晴らしい物語です。

舞台の時代背景は、1912年(日本では大正元年ですね)のタイタニック号沈没のシーズン1から始まり、第一次世界大戦をへて、1925年のシーズン6まで続く大河ドラマです。シーズン1の1912年は、ヴィクトリア女王の息子のエドワード朝(エドワーディアン)が終わったばかりのころで、クライマックスの1925年まで、ドラマ「ダウントン・アビー」というのは、まるまるジョージ5世(現エリザベス女王の祖父)の時代なのですね。そう、今回の映画のスペシャルゲストのジョージ5世です。
つまり、文化様式はちょうどアールヌーボーからアールデコの間になるわけです。そして、今回の映画はシーズン6最終回から2年後の、1927年が舞台です。

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前知識がわかったところで、この映画の何がどうすごいか、私なりの感想をお話していきましょう。
第1回目のこちらは、基本的なネタバレなしですのでご安心を。

その①プロローグからつかみはOK
シーズン1の1回目をオマージュした冒頭

まず冒頭のシーンからもうファンの胸はわしづかみですよ。
なんといっても、ドラマ「ダウントン・アビー」の主題歌であるおなじみの「The Suite」がいきなり流れる!そうです、まるで胸の鼓動の高鳴りのようなあの音。
ファンは、「あ~、つ、ついに戻ってきたわ…この世界に」という感動でもう胸いっぱいです。
しかも、冒頭シーンは、完全にシーズン1初回のタイタニック号沈没の知らせを受け取るシーンにかぶせて(オマージュして)きているのです。ニクイ演出です。製作者の遊び心を感じるシーンです。

映画のロケ地は、おなじみハイクレア城だし、セットも以前と同じロバートの書斎やら、使用人たちのキッチンだわで、ファンたちからみればもう、勝手知ったる我が家。おまけに音楽はいつもの音楽。嬉しいことに、レギュラーメンバーは全員返り咲き。これほどの安心感はあるでしょうか。

その②結局は、ファンサービスのための映画
さながらアンコールかエキシビションのよう

この映画は、ファンから映画化のウワサが炎上?し、ついに作らざるを得ない雰囲気になって作った、と総指揮のジュリアン・フェローズが回顧しています。ドラマ版が消化不良だったわけじゃないんですね。シーズン6で、これ以上まとまりが良い状態がないくらい、完璧なハッピーエンドでおわっていますから。

そのため、映画そのものの存在意義としては、まるでコンサートのアンコールか、フィギュアスケートのエキシビションのような立ち位置なわけなのですよ。製作者もそうだし、出演者もそうだし、ファンもそう。とても良い演奏の後のアンコールや、最高の演技が見れたあとのエキシビションのように、3者の気持ちが渾然一体となって、なんというか、とても高揚感に溢れる作りになっているのです。

実際、長い年月の苦楽を共にしてきた「ダウントン・アビー」の製作メンバーはとても仲が良い事で有名で、トーマス役のロバード・ジェームズは「共演者たちは学生時代に戻ったように、ちょっとおかしいくらい興奮して騒がしい現場だった」とわざわざ言うくらい。
そうなんです、役者さんたちが、心なしかドラマ版よりとっても生き生きとしているんですね。画面からも伝わってくるものですよ。もちろん、悪ノリしているわけでもなく、演技は完璧なのですが、自分たちが再び「ダウントン・アビー」の役をやれていることに非常な喜びを感じているのが、ダイレクトに伝わってくるんです。いやーほんと。人気者の役者さんも大勢いる中で、シーズン6から4年たった後も、レギュラーメンバーが1人も欠けることなく(出演を断ることなく)登場してくれたのは、いろんなシリーズ映画ものでも稀有なんじゃないでしょうか。

もちろん、それはファンも同じ気持ちです。ダウントンアビーの住人みんなとの再会が、これほどまでに嬉しいものなのか、と何度も感じる映画なのです。そのため、2時間の映画は、本当にあっ!という間の夢の中の物語のよう。私も数々の映画をみてきましたが、これほどまでに「はっと気が付けば2時間が終わっていた」というのはなかったです。

この映画は、始まる前に登場人物の簡単な説明があり、ドラマをみていない方でももちろん楽しめる作りにはなっています。ですが、シーズン6までの長い長い道のりを共に歩んできた製作者・出演者・ファンの3者が共にアンコールを楽しみあう、これほどの高揚感はきっと味わうことが出来ないかもしれません。

…と、まだ2つしか話していないのにもうこんなに長くなってしまいました。続きは次回にしましょう。コスチュームも、陶磁器もお話したいので、一体連載何回分になるのか、筆者の私もまだ分かりません!次回もお楽しみに。

 

 

【このページの文章を書いた人】 玄馬 絵美子(げんば えみこ)

株式会社アリベ 取締役 / マネーリテラシーアドバイザー / 薬剤師 カリーニョを運営する三姉妹の長女。薬局・病院で薬剤師として勤務後、現在、子育て中のアラフォー主婦。株式会社アリベでは受注・財務面、そしてカリーニョでは趣味で研究してきた東西の19世紀末~20世紀初頭の文化・様式・芸術の世界を紹介するコラム執筆を担当。 【これまでの実績】 全国のMR経験薬剤師が作る転職応援サイト『MRファーマシスト』にてマネーコラム連載。 新聞の文芸欄掲載多数。掲載作品はこちら(個人ブログ「私の読書遍歴」)

 

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