【器×対談 第1回 ロブマイヤー編(2/5)】 ロブマイヤーの特徴とは?

カリーニョ代表 加納亜美子が、陶磁器やグラスに携わるお仕事をされている方々にインタビューし、陶磁器・グラス業界のリアルな声をお届けする対談コラム「器×対談~カリーニョと器を語り継ぐ~」。

前回に引き続き、ロブマイヤー日本総代理店 株式会社ロシナンテの部長・天野光太郎様との対談をご紹介していきます。

今回はロブマイヤーの特徴を中心にお話いただきました。

  1. ロブマイヤーとは「応用美術」
  2. ロブマイヤーの特徴とは?(現在閲覧中)
  3. 「バロック調シャンデリア」の元祖はロブマイヤー
  4. 芸術家とともに歩むロブマイヤー
  5. ロブマイヤーの願い

今一番おすすめのワイングラスは、「ブルゴーニュグラス」

(加納)――天野さんがロブマイヤーのグラスの中で、おすすめや好きなものはありますか?

(天野さん)「もちろんどれも好きですが、最近社内では、バレリーナシリーズの『ブルゴーニュグラス』を推しています。これは華やかな香りのするワインが適しています。香りを味わう、優しく喉に入っていく、ちょっと足の長い スタイリッシュな感じが、今一番盛り上がっていますね。 」

(写真に写るのが、ブルゴーニュグラス。2019年4月ロブマイヤーセミナーで撮影)

ワイングラスの用途は限定しない

――「ブルゴーニュワイングラス」と言いますが、用途としては赤ワイン用ですか?

「いえ、最近ではシャンパンもボールのあるグラスのほうが良いという声も増えてきましたし、そこに特別こだわっているわけではありません。大まかには決めていますが、ブドウの品種ごとに決めているわけではないので、相性の良いもので、という感じでしょうかね。」

【MEMO】
※「ボールのあるグラス」…丸みのある形状のグラスのこと

――確かに名前の付け方も、他のメーカーさんだと「 白ワイン用グラス」や「赤ワイン用グラス」という名前で商品を販売することが多い中で、ロブマイヤーの場合は、例えばバレリーナシリーズでは「No.〇」のような、あえて用途を特定していない商品名になっていますよね。
それは一体なぜなんですか?

「元々オーストリア本国でも、 『赤ワイン用』『白ワイン用』と厳密には決めていないからです。お客様がグラスに合うものを選んでくださればいいのではないでしょうか。」

――ワイングラスをビールに使うとか、日本酒に使うとか?

「そうですね。でも日本酒は、最近ボールのあるもので楽しんでいただく方も多いですから、日本酒用のグラスは開発したいねっていう声が社内でもあります。」

――ちなみにバレリーナシリーズの中で日本酒のおすすめのグラスはありますか?

「4番のグラスですね。実際、九州の日本酒のメーカーさんから、まとめてご注文をいただきましたよ。」

(バレリーナシリーズ。左から7番目がNo.4。写真:株式会社ロシナンテ)

ロブマイヤーの携帯用グラス『トラベラー』

――ちなみに私は最近移動が多く、『トラベラー』のグラスを愛用していますが、『トラベラー』は新幹線移動の時などに本当に便利ですよね。

ある方から、最近日本酒の蔵元めぐりをする時に『トラベラー』を持参して使っていると聞いて、なんてかっこいいんだ!と思ってしまいました。

持ち運びができるグラスがあるのも、他にはない特徴ですよね。

(新幹線の車内にて。『トラベラー』でワインを楽しむ。撮影:2018年11月)

「ちゃんとハプスブルク家には、旅行用の食器ケースを使用していたという時代的な背景があって、それが現代に進化した形として『トラベラー』というものがあります。

他にも『ナポレオングラス』というグラスが、持ち運び用のケースに入って実際にロブマイヤーのアンティークでもありますよ。そういう伝統があった上で、今の『トラベラー』があるわけなんですね。」

(写真上:トラベラーⅡ黒、写真下:トラベラーⅡバーガンディ(画像:株式会社ロシナンテ))

ロブマイヤーは6代続くファミリーカンパニー

――ここでロブマイヤーの歴史についてお尋ねしたいのですが…

「ロブマイヤーは、1823年創業で6代続くファミリーカンパニーです。なので、一族が代々受け継いできて、現在があります。

当主が変わるとデザインも傾向も変わっているし、受け継ぐものも変わっていく部分もそれぞれあります。

デザインの傾向は、その時代の最高の建築家やデザイナーとコラボレーションして作り上げています。広報スタイルが元々万博から始まっているので、世界的なメッセや展示場に出展し世界に広めるというスタイルは、現在も変わらないような気がします。」

(写真左から、6代目レオニード社長、加納。2018年6月オーストリア大使館にて撮影)

ロブマイヤーのシャンデリアは、「キラキラしすぎない柔らかな光」が特徴

――現在、ロブマイヤーは シャンデリアとグラスを製造してるかと思いますが、 創業当時からグラスとシャンデリアを両方製造されていたのですか?

「そうですね。最初からシャンデリアとグラスは作っていました。ウィーンの都市改造計画や万博など、世の中が産業を発展させていた時代に、ロブマイヤーの基盤というものが出来てきて、デザインの多様性ができました。」

――個人的にロブマイヤーのシャンデリアグラスは、他と比べるのもなんですが、 「キラキラしすぎない」と感じています。
グラス本来の色が伝わってくるような作品がすごく多いな、という印象がありますね。

「いわゆるカリクリスタルという素材を使っていて、これには鉛が含まれていません。 輝度(きど)って言うんですけれども、光の屈折率は抑えてあって柔らかい光ですが、ガラス本来の照りとか光は発揮されます。

特徴は軽く、硬さがあること。そしてその上にエナメリング(彩色)とか繊細なエングレイヴィング(彫刻)が施されるのですね。 」

(『フローラルS』。2019年4月ロブマイヤーセミナーにて撮影。)

――硬いと、彫刻がすごく難しそうですね…

「難しいですね。しかし柔らかくない分だけ、時間をかけて制作すれば、繊細な絵柄が彫れます。」

――そういえば硬いから、割れにくく、以前聞いた話では、実はロブマイヤーのグラスは食洗機もOK とか。

「そうですね。食洗機の使用は問題ありません。」

――なかなか怖くて食洗機は使えないですけど…(笑)

「食洗機で洗って、磨き上げるところだけ自分の手でやるという方もいますね。」

次回に続く)

取材協力:
ロブマイヤー日本総代理店 株式会社ロシナンテ
http://www.lobmeyr-salon.ecnet.jp/

<器×対談>第1回ロブマイヤー編(全5回)

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この記事を書いた人

加納亜美子

西洋磁器史研究家 / 料理研究家
「カリーニョ」代表。カリーニョを運営する三姉妹の末っ子。

幼少の頃から洋食器コレクターの父親の影響を受け、食器の持つバックストーリーに興味を持ち、文系塾講師、洋食器輸入会社で勤務後、2016年1月~会員制料理教室「一期会」、2019年1月~高級食器リングサービス「カリーニョ」の運営を始める。
曾祖母は赤絵付けの原料となるベンガラ作りに関わっていたルーツを持つ。