【器×対談 第1回 ロブマイヤー編(1/5)】 ロブマイヤーとは「応用美術」

カリーニョ代表 加納亜美子が、陶磁器やグラスに携わるお仕事をされている方々にインタビューし、陶磁器・グラス業界のリアルな声をお届けする対談コラム「器×対談~カリーニョと器を語り継ぐ~」がスタートしました。

初回となる今回は、ロブマイヤー日本総代理店 株式会社ロシナンテの部長・天野光太郎様との対談を、5回にわけてご紹介していきます。

  1. ロブマイヤーとは「応用美術」(現在閲覧中)
  2. ロブマイヤーの特徴とは?
  3. 「バロック調シャンデリア」の元祖はロブマイヤー
  4. 芸術家とともに歩むロブマイヤー
  5. ロブマイヤーの願い

2019年は日本・オーストリア修好150年を記念して、日本国内で様々な展覧会が開催されます。
それに関連し、2019年4月にロブマイヤー日本総代理店 株式会社ロシナンテと共催で、それらの展覧会の主題となる「ウイーン世紀末芸術」を、ロブマイヤーの作品、関連画像を通して学べるセミナーを開催しました。

(セミナーでの様子。左が天野さん)
【関連記事】日本・オーストリア修好150周年記念セミナー『ウイーン世紀末芸術とロブマイヤー』終了しました。

今回の対談は、その直前に行われたものです。

(写真左から加納、天野さん)

高級商材と共に半生を過ごした天野さん

(加納)――私が天野さんと知り合ってから、2年ぐらいでしょうか。

振り返ると天野さんご自身のことや、ロブマイヤーのことを、天野さんから詳しく聞く機会が意外となかったような気がします。

そもそも 、天野さんがロブマイヤーに入社しようと思ったきっかけは、何だったのですか?

(天野さん)「ロブマイヤー入社前に、10年近くオーストリアにあるアウガルテンの仕事をしておりまして 、その代理店が契約終了になって、その時にロブマイヤーの方が求人してたので、移行したって感じですね。」

※アウガルテン…1718年に開窯した、ウィーンを代表する陶磁器メーカー
(写真:2018年5月アウガルテンセミナーで撮影)

――それはいつぐらいですか?

「10年ちょっと前です」

――10年前・・・2009年頃ですね 。

「そう、2009年ぐらいですね 」

――前職もアウガルテンということですが、オーストリア自体がお好きだったんですか?

「オーストリアというより 、工芸品が好きだったんですね。今までずっと高級商材の仕事しかしていませんでした。

ロブマイヤーとは、『ウィーンプロダクツ』という、オーストリアのウィーンの商工会議所が認定した高級品の繋がりがきっかけでしたね」 ※ウィーンプロダクツ…1995年ウィーン商工会議所により高品質の製品を生産する企業のトレードマークとして考案されたもの

――ウィーンプロダクツといえば、オーストリアは今年、日本と友好150周年ということで、イベントが続々とありますよね。

「そうですね。今年は2月にオーストリアのクルツ首相が来日されたり、 クリムト展、モダン・ウイーンの世界展、秋にはハプスブルク展など、目白押しです。

ちょうどオーストリアを知ってもらういい機会になりますので、 今回のロブマイヤーセミナーでも、そのあたりの内容はお話します。 」 【MEMO】

モニターに映るのが、クルツ首相。若干31歳でオーストリア新首相となったイケメン政治家。モニターに映った瞬間に、セミナー参加者(女性)から黄色い歓声が…。
写真:2019年4月 ロブマイヤーセミナーにて撮影
【関連記事】今年は日本×オーストリア友好150周年の記念すべき年

――私もセミナーで天野さんのお話を聞けるのが楽しみです。
ちなみにロブマイヤーとしても、今年はいろんな催事を考えてらっしゃるんですか?

「ロブマイヤーとしては、今年はそんなに考えてはないんですが 、1823年に創業していますから、 2023年が200周年。それに向けてはいろいろと 新しい商品開発や、 古いものを復刻しようかと考えていますね。」

ロブマイヤーをひとことでいうと、「ガラスの応用美術」

――今後カリーニョで、今回のような対談をシリーズ化していきたいと思っています。

そんな中で、各ブランドさんにぜひお尋ねしたいことがあります。
それは、ロブマイヤーのことを全く知らない方に、「ロブマイヤーはこういうものなんです」ということを語る際、「ロブマイヤーといえば○○」 というキャッチフレーズを教えてもらいたいのです。

1つだけでなくて、複数でもいいのですが、ひとことで言えばこれ、という言葉が何かありますか?
「それ偶然ですけど、先日東京ドームの テーブルウェアフェスティバルの時に、隣のブースにいた某ガラスメーカーの ベテランさんからも『ロブマイヤーをひとことで言うと』って聞かれまして(笑)。

『ひとことで表現は難しいだろう』というのが社内的な回答であり、なかなか答えることは出来ないだろう、というのがあるんですけれども …。

あえて歴史を紐解いていくと、『応用美術』という言葉ですね。」

――応用美術…これは具体的にはどういうことを意味する言葉なのでしょうか?

「『用の美(ようのび)』という言葉が日本にはありますけれども、それと同じで、ロブマイヤーは『ただの抽象美術や美術品』ではないんですね 。

『実用性のある芸術品』、それがロブマイヤー。
なので、ロブマイヤーを一言でいうと、『ガラスの応用美術』ということになります。」 ※「用の美」…日本の民芸を代表する用語。道具は美術品のように鑑賞するだけでなく、使ってこそ美しいという考え方

――なるほど、「ガラスの応用美術」。

「『応用美術館』というのがウィーンにもありますし 、それを開設する時にロブマイヤーがかなり協力して作り上げたという話があります。」

※応用美術館…オーストリア応用美術博物館(MAK)。オーストリア・ウィーンにある1890年から1938年のウィーンにおける美術工芸品をテーマとした装飾芸術美術館。

「持つ人の佇(たたず)まいを美しくするグラス」

――私がすごく印象的だったのが 、こちらにあるバレリーナNo.3 を天野さんに以前お話ししていただいた時に、「ロブマイヤーのグラスというのは、香りや味が引き立つだけではなく、グラスを持つ人を美しくするのだ」と言われていたことです。それって他のグラスではあまり聞いたことがない言葉だなと思いました。

(ロブマイヤー バレリーナNo.3)

「『佇(たたず)まいの美しさ 』がやはりキーワードになりますね。他にも『ワインの装いが綺麗になる』、そして『空気のように軽い』とおっしゃる方もいらっしゃいます。」

――それは本当に写真では分からない世界ですよね。

去年のセミナーで、ちょうどこのグラス(バレリーナNo.3)で試飲をしていた時、参加者の方々がグラスを手に持った瞬間に「あっ」てすごいエレガントな声を発したんですよ。

思わず声を出したくなるような感動というのが、ロブマイヤーのグラスにはある。
それをすごく感じました。

次回に続く)

取材協力:
ロブマイヤー日本総代理店 株式会社ロシナンテ
http://www.lobmeyr-salon.ecnet.jp/

<器×対談>第1回ロブマイヤー編(全5回)

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この記事を書いた人

加納亜美子

西洋磁器史研究家 / 料理研究家
「カリーニョ」代表。カリーニョを運営する三姉妹の末っ子。

幼少の頃から洋食器コレクターの父親の影響を受け、食器の持つバックストーリーに興味を持ち、文系塾講師、洋食器輸入会社で勤務後、2016年1月~会員制料理教室「一期会」、2019年1月~高級食器リングサービス「カリーニョ」の運営を始める。
曾祖母は赤絵付けの原料となるベンガラ作りに関わっていたルーツを持つ。