『遺言 愛しき有田へ』― 「将来にむけての橋渡し」をするために必要なこととは。

8月31日。
私がいま小学生だったら、夏休み最終日の今日は、ひたすら夏休みの宿題に追われている一日だったと思います・・・。

「3週間、毎日既読本を再読して、読書感想文を書く」という現在の私にとっての夏休みの宿題も、今日が最終日です。
結果的に今日を含めると、21日間で紹介できた本は18冊。毎日更新は達成できませんでしたが、それでも自分にとっては、頭の整理になる非常に良いトレーニングだったなと思います。

そんな最終日に紹介したいのは、3日目の読書感想文で紹介した『余白の美』の作者・14代酒井田柿右衛門の『遺言 愛しき有田へ』(白水社,2015年)です。

この3週間で読んできた陶磁器に関する書籍を通して、強く感じたことがあります。

それは、食器をとりまく生活様式が、少なくともこの約20~30年の間で、本当に大きく変化したのだな・・・ということ。
今回ご紹介してきた18冊のうち、そのほとんどが、80年代中頃から90年代にかけてのバブル期に多く刊行されていた書籍です。日本における陶磁器産業は、この頃どんどん右肩上がりで伸びていき、そして90年代を境に、どんどん斜陽化していきます。

陶磁器産業の売上はピークであった1991年に比べて、85%も縮小している現状。これから日本のやきもの、日本の陶磁器産業はどうなっていくのか―。

そんな現状を、『遺言 愛しき有田へ』で、日本最古の磁器生産の地である有田の人間国宝、故・14代酒井田柿右衛門先生が、自身の言葉で率直に述べられています。

私が襲名した時代(※1982年)の前と後の有田っていうのはずいぶん変わりました。
(中略)
 
西洋のものがどんどん入ってきてますし、使い勝手というか、若い人たちに向けてのやきものの素顔っていうのが変わってきていると思います。
 
これは家庭で使うものがまったく変わってしまっているということと、営業用に使われる食器類がまったくもう売れないことに現れとると思います。安くて、合理的で、綺麗で、っていうものに切りかわってしまってます。
 
まぁ、有田にこだわった食器を使う場所がなくなってきたともいえるでしょう。日本人の生活様式、価値観の大転換が起こっていたということなんじゃないでしょうかねぇ。
(中略)
 
それでいろんな変わったものを開発するわけですね。しかし、それじゃそういうものがどんどん売れるかっていうと、そうもいかない。なにもかもがどんどんどんどん変わっていっとる。その変化と変化の速さについていけなくなっとるのが、いまの有田の状況だと思うんです。
(108~111頁)

2015年に発刊されたこの書籍で14代が語った「有田の状況」というのは、日本の他の窯元、もっといえば世界中の窯元で、同じようなことが起きていると思っています。

生活様式と、価値観の大転換。それがすごいスピードで起こっている。そして、そういった時代のスピードに職人さんたちがついていけていない。現場を良く知る14代が語るこの文章には、強い説得力を感じます。

どこの産地も非常に変わった。そんな中で伝統的なやきものを作る現場として、窯元が果たす責任とは何か――。

14代はそれは「将来に向けての橋渡しをする」ということだと主張されています。しかし、窯元だけではそれができない・・・

これは町としてやるべきなんですよ。しかし、町だけではとてもやりきれんぐらいのことなんですね。町の責任ということもありますが、国がもっと乗りださんといかんと思います。

そして、一般の人たちがもっともっと やきものに興味をもっていただいて、使ってもらうことですね。

もちろん、デザイン、形、値段、そういうものを現代に合うように私たち生産者としても努力するべきでしょうし、その後ろには技術をきとっと守ってる町がなければいけません。
(144頁)

やきものの伝統や文化を守るには、窯元だけの努力では限界があり、そこには町や国、そして消費者である私たちがもっともっとやきものに興味を持ち、使ってくれる機会が必要。

これはカリーニョの運営をしながら痛感することなのですが、食器を買う人・使う人が減っているというのは、掘り下げていくと、そもそも「食器に興味を持つ人」がバブルの時代に比べて、明らかに減っているからだと思っています。

だからこそ私が・・・私たちカリーニョが、斜陽化する食器産業のために出来ることは、生活様式や価値観が目まぐるしく変化する今の時代で、「食器に興味を持つ人」が増えるような活動をすること。

それは、今回の読書感想文の17日目の文章

私個人としての目指す方向性は「陶磁史に入門する(陶磁史に興味を持つ)きっかけ」を沢山つくっていくことなのですね。私の話を聞いて、もっと興味が湧いたら、専門書を読んだり、もっとアカデミックな方々の話を聞きに行ってください、実物を見て手に取るために食器屋さんに行ってみてください、試しに使う機会が欲しければカリーニョをご利用くださいね・・・そういうスタンスが理想図です。

に表れていのかな、と思っています。

今回の「3週間、再読本の読書感想文を書く」という課題は、カリーニョや私自身の目指す方向性と向き合うための非常に良い時間となりました。

あと5日で、会社を立ち上げて1年。
このタイミングで、こういうきっかけをもてたのは良かったと思っています。

何より、Instagramなどで「参考になりました」「読書感想文を読んで本を買ってみました」というコメントを度々いただけたのも励みになっていました。3週間お付き合いくださって有難うございました!

次に挑戦するときには、「3週間毎日更新」を達成し、21冊を紹介できるよう頑張ってみようと思います!(次はいつ来るかな・・・笑)

【このページの文章を書いた人】 加納亜美子(アミーゴ先生)

株式会社アリベ 代表取締役/『カリーニョ』代表 カリーニョを運営する三姉妹の末っ子。料理教室「一期会」を主宰し、洋食器輸入代理店でのセミナー講師、コラム執筆など多岐にわたり活動中。 通称:アミーゴ先生。これは、”世界中に沢山の友達が出来るような社交的な人になるように”と、父親が「アミーゴ(スペイン語で『友達』)から由来して名付けた「亜美子」にちなんだニックネーム。

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