「商業的」ではない、リアルな陶磁器の歴史を知れる本

ハプスブルク家の歴史と西洋磁器やガラスの歴史をリンクさせながら、今まで4回にわたって開催してきたセミナーも、明日が最終回です。

今日は明日のセミナー準備と、来年(2020年1月)開講予定の陶磁器セミナーのカリキュラムを作成。
その作業中、自分自身も西洋磁器について知らない世界がまだまだあることを痛感しながら、知れば知るほど、商業的に見る陶磁史と、学術的に見る陶磁史にギャップがあることを改めて感じていました。

私の感じている「ギャップ」。
それは、『アンティーク・カップ&ソウサー 色彩と形が織りなす世界』(和田泰志著,講談社,2006)の以下の引用文の通りです。

ヨーロッパの磁器三百年の歴史が、美談・成功譚ばかりで彩られているはずがないということも、本著の重要な主張である。

窯の盛衰史は男達の闘いの記録であり、そこには裏切りもあれば陰謀もある。嘘も逃亡も泥棒も殺人もある。借金も倒産・破産もある。そんな当然のことが、我が国では情報操作され、多くの人が気づかない状態に置かれている。
窯の海外のホームページなどでは、自社の芳しからざる過去の出来事についてもきちんと公開しているのに、日本の輸入代理店が配るパンフレットや食器本の原稿には美辞麗句が溢れ、そうしたマイナスの事実は隠蔽されている。
創業年を百年以上も古く偽ったこじつけを、今日までまかり通らせてきたメーカーはいくらでもあるし、コピー・贋作メーカーだったことを隠している窯もある。
だから研究者は知り得た真実は真実として、積極的に公表しなければならない。
(2頁)

とても辛辣な言葉で綴られた文章ですが、幅広い教養を持ち、実際に自身もアンティーク・カップのコレクターで「アンティーク・カップの巨匠」「アンティーク・カップの神」とネット上で称されている和田氏の指摘は的確で、事実です。

この本は2011年に、私がポーセラーツの卒業制作の参考となるような書籍を探していた時に購入したものでした。初めて読んだとき、数々の美しいアンティーク・カップの写真に感動しながらも、それ以上に衝撃的だったのが、解説文に記載されていた、輝かしい歴史を持つ大好きな洋食器ブランドの、非常に重く暗い闇を持った歴史でした。

その時の衝撃は今でも忘れられません。読み終えてからすぐに、1996年に刊行された『ヨーロッパアンティーク・カップ名鑑』(和田泰志著,実業之日本社,1996)も取り寄せました。

それから紆余曲折ありながら約8年経った今、特定の食器ブランドの代理店でなければ学者でもない、でも食器に興味がある方を対象に、食器を貸し出したり、食器の知識を伝えたりする「高級食器シェアサービス」を運営する立場の自分が、どこまでその歴史を掘り下げて紹介していくべきなのか、セミナーの準備をしながら、毎回とても頭を悩ませているのが本音です。

しかし、食器に限らずさまざまな出来事には、美しい部分と醜い部分があって、そういう部分があるからこそ、物事に良くも悪くも深みが増すのも事実です。

どう感じるかは人それぞれの価値観だと思いますが(少なくとも私はそういった歴史を知って、ますます西洋磁器の歴史に興味を持つようになりました)、まずは興味を持ってもらったり、「知る」ということが大切だと思い、私のセミナーではできる限り、良い歴史も悪い歴史も両方を話す、中立的な立場になれるよう心がけています。(…といっても、今は”良い歴史”のほうが比重はだいぶ大きいので、まだ中立とは言えないか……。)

カリーニョのコンテンツ(コラム)も、読み返すたびに「まだまだ表面的だなあ」と感じる部分や、私自身の知識不足を感じる部分も多々ありますが、「代理店でなければ学者でもない」私だからこそ伝えられるものが何なのか、これからも経験値を重ねていきながら見出していきたいものです。

ちなみに、カリーニョがメインとしている事業は「食器のレンタルサービス」ですが、あえて「シェアサービス」という名称を使っているのは、行っている事業が「食器のレンタル」だけではなく、「知識・経験(体験)のシェア」も大切にしているから。

陶磁器セミナーは受講者の方にとっても、私自身にとっても、知識と経験をシェアできる貴重な機会で、特に今回のような継続したセミナーは、毎回 前回のセミナー内容と重ねながら、どんどん深い内容ができるようになり、私も本当に勉強になりました。

今後もできる限り、単発ではなく継続的なセミナーを続けていきながら、私の持つ最大限の知識を、受講者の方と共有できればと思っています。

まずは明日の最終日!
皆様と充実した時間を過ごせますように。。。

 

【アミーゴの読書感想文】

11冊目:『アンティーク・カップ&ソウサー 色彩と形が織りなす世界』(和田泰志著,講談社,2006)

12冊目:『ヨーロッパアンティーク・カップ名鑑』(和田泰志著,実業之日本社,1996)

陶磁器の関係する書籍には、年号が違ったり、人物名の読み方が違ったり、ときには子供の人数が違ったりすることもあり、ときどき何が本当なのか分からなくなることがありますが、和田氏は「間違った表記が一切ない」という絶対的安心感が持てる文章です。
(だからなのか?、読書感想文を書くこちら側が緊張してしまい、本文の内容に具体的に触れられなかった…。)

本当に辛口な文章が多いのですが、あまりに辛口すぎて、思わず何度も読み返したくなる中毒性があります。笑
どこか遊び心というかウィットに富んだ感じもあり、とにかく文章全体から教養深さが溢れています。。。

 

【このページの文章を書いた人】 加納亜美子(アミーゴ先生)

株式会社アリベ 代表取締役/『カリーニョ』代表 カリーニョを運営する三姉妹の末っ子。料理教室「一期会」を主宰し、洋食器輸入代理店でのセミナー講師、コラム執筆など多岐にわたり活動中。 通称:アミーゴ先生。これは、”世界中に沢山の友達が出来るような社交的な人になるように”と、父親が「アミーゴ(スペイン語で『友達』)から由来して名付けた「亜美子」にちなんだニックネーム。

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