『花と緑が語るハプスブルク家の意外な歴史』― ハプスブルク家×植物という面白い切り口の一冊

今年の4月から月に1回行ってきた「ハプスブルク家とテーブルウェアの世界」のセミナーも今週で最終回です。毎回、熱量の高い受講生の方々に恵まれて、講師側の私も本当に充実した時間を過ごさせていただきました。

最終回は、これまで紹介してきたマリアテレジアからウィーン分離派までの総おさらい。そこに新しく何かしらのエッセンスが加えられたらと、既読本ではなく先日購入してからまだ手つかずだった本に手を伸ばしました。

それが、『花と緑が語るハプスブルク家の意外な歴史』(関田淳子著,朝日新聞出版,2018年)。

著者の関田氏は長年ハプスブルク家を研究されている方で、その著書も多く、私もほかに3冊ほど愛読書として手元にあります。それらは全て「ハプスルブルク×食卓」というテーマで、ハプスルブルク家に関わるお菓子や食卓に関するものでした。

今回はそんな関田氏の新刊、しかも切り口が「ハプスルブルク×植物」という新しいものだったので、読むことを楽しみにしていました。

単にハプスブルク家と植物の関係を紹介するだけではなく、ルドルフ1世から始まり、ハプスブルク家が崩壊するまでの一連のハプスブルク家の歴史を網羅した歴史書としても楽しめる内容は、さすが長年ハプスブルク家を研究されてきた関田氏の文章とだけあって、その世界観に引き込まれていく魅力があります。

マリアテレジアがパイナップル好きで、それが今日のシェーンブルン宮殿にも影響を及ぼし、今でも宮殿内の椅子カバーやカーテンにパイナップル柄の生地が使われているものがあることや、夫であるフランツ1世がテキーラの材料にも使われるリュウゼツランが好きだったエピソード等、ハプスルブルクと植物の関係は知らないことが多く、とても良い勉強になりました。

個人的に印象的だったのは、彼らの息子のヨーゼフ2世の時代にシェーブルン庭園に植樹されたイチョウが、実は日本からヨーロッパに伝わった最初のイチョウの種子から生育した苗木だったこと、さらにヨーゼフ2世の弟であるレオポルド2世が、妹であるマリーアントワネットを革命の危機から救おうと、ヨーロッパ君主たちにブルボン家の救助を要請し会談を行ったドレスデン郊外にあるピルニッツ城には、日本からやってきたツバキが植えられていたことなど、この書籍の中ではたびたび、日本の植物が「物言わぬ歴史の証人」として、ハプスルブルク家の歴史をじっとみていた事実を知ることができたことです。

西洋磁器史に何かと日本が関係してくるのと同様に、ハプスルブルクの歴史にも日本が細い歴史の糸でつながっているのだと知ると、ますます興味が湧いてきます。

それにしても本当に内容が濃く、著書の関田氏もあとがきで「本書脱稿までにはかなりの歳月を要した」というだけあって、相当に時間をかけて作り上げられた書籍だということがとても理解できます。

戦争や政略結婚など決して順風満帆なことばかりではなかったハプスルブルク家の歴史の中に、ところどころ散りばめられた植物の話は、重いストーリーを読み進める中で、書籍の読み手側である私たちにとっても、どこか癒しの存在になっているような感覚でした。

またセミナーが終わってから、じっくり再読してみようと思います。

【アミーゴの読書感想文】
10冊目:『花と緑が語るハプスブルク家の意外な歴史』(関田淳子著,朝日新聞出版,2018年)

【このページの文章を書いた人】 加納亜美子(アミーゴ先生)

株式会社アリベ 代表取締役/『カリーニョ』代表 カリーニョを運営する三姉妹の末っ子。料理教室「一期会」を主宰し、洋食器輸入代理店でのセミナー講師、コラム執筆など多岐にわたり活動中。 通称:アミーゴ先生。これは、”世界中に沢山の友達が出来るような社交的な人になるように”と、父親が「アミーゴ(スペイン語で『友達』)から由来して名付けた「亜美子」にちなんだニックネーム。

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