「軟質磁器」と「硬質磁器」の違いを学ぶ

東洋陶磁学会主催の研究会に参加するために、青山学院大学に行ってきました。

今回の研究会のテーマは「セーヴル磁器製作所における“軟質磁器”と“硬質磁器”」
サントリー美術館の学芸員である安河内幸絵さんの発表です。

 

「磁器」にはいくつかの分類がありますが、その分類として代表的な「軟質磁器」と「硬質磁器」の違いを、セーヴル磁器を例にして明白にするというのが、発表の一番の趣旨でした。

「東洋」陶磁の専門家や愛好家が、「西洋」陶磁(セーヴル)を学ぶ、という研究会ならではの質問が飛び交い、私も思わず挙手して質問をしたりと、終始、非常に興味深く勉強になる発表会でした。

硬質磁器に関しては、カリーニョが現在取り扱っている主力商品でもあるので、ここで磁器についてまとめておこうと思います。

軟質磁器と硬質磁器の決定的な違いとは?

まず、軟質磁器と硬質磁器の決定的な違いは、「硬質磁器はカオリンを含有し、軟質磁器はカオリンを含有しない」ということ。

(カオリンの重要性は、以下のコラムが参考になると思います)

ウェッジウッドが得意とする「ボーンチャイナ」はカオリンを使用していない(牛骨灰を使用している)ため、「軟質磁器」
マイセン、ヘレンド、リチャード・ジノリなどは、カオリンを使用した、「硬質磁器」です。

17世紀までのヨーロッパでは、「白くて、薄くて、硬い」中国や日本のような白い磁器(以下『中国磁器』に統一)を作ることができませんでした。現在進行中の4コマ漫画でも紹介していますが、「磁器焼成には、カオリンが必要」ということを知らなかったのですね。
そのため、高額な費用のかかる輸入に頼るしかありませんでした。

彼らは中国磁器に強い憧れを抱き、なんとか見た目だけでも磁器のように見える器を開発していきます。それがヨーロッパにおける「軟質磁器」誕生のきっかけです。イタリアのメディチ磁器(1575年~)や、フランスのルーアン窯(1673年~)、サン=クルー窯(1697年~)などが有名です。

その後、中国磁器の決め手が「カオリン」だと解明され、カオリンを含む磁器、つまり「硬質磁器」がドイツで初めて誕生しました。それがマイセン磁器製作所(1710年)です。

セーヴル磁器製作所の特性

「セーブル磁器製作所(以下セーヴル)とはどういう窯か?」ということを一言でいえば、「ルイ15世や、その公妾ポンパドゥール夫人が援助したフランス王立の名窯」という感じでしょうか。詳細は今回は割愛します。

今回のテーマは「軟質磁器」と「硬質磁器」でしたが、この2つの磁器を紹介するうえで、セーヴルはとても参考になる窯元です。
というのも、フランスのセーヴル磁器製作所は軟質磁器と硬質磁器を同時期に(同時進行で)制作していた珍しい窯だからです。

なぜ「珍しい」かというと、上述の通り、本来であれば「硬質磁器」を作りたかったのにカオリンが必要、ということがわからなかったヨーロッパ諸国は、カオリンがなくても磁器のように見せて作れる軟質磁器を作っていました。大げさにいえば、「軟質磁器は、硬質磁器の作り方がわからないから、”仕方なく”作っていた」という消極的なスタートだったのですね。(もちろん理由はほかにもあります)

そのため、ドイツのマイセンを皮切りに、カオリンを使った硬質磁器を作れるようになった各窯は、わざわざ軟質磁器を作る必要性がなくなったので、たいていの場合、硬質磁器のみしか作らなくなっていったのです。

しかし、そんな中でセーヴルは、軟質磁器には、硬質磁器には出せない輝きのある色、鮮やかさ、透明感などの豊かな表現力(※これは軟質磁器の特性というよりも、軟質磁器で使用する鉛釉の特性)、そして硬質磁器には、軟質磁器にはない堅牢性(たとえばナイフを使っても傷つきにくい、熱い飲み物を入れても割れないなど)があり、作品に応じて、その素材を柔軟に変えていきました。

(去年開催されたセーヴル展。写真撮影がOKな貴重な企画でした)

(ポプリ壺「エベール」(セーヴル磁器製作所、1757年)
鮮やかな緑色が印象的な、軟質磁器で作られたポプリ壺。)

(ボウル部分が軟質磁器、三脚の土台が硬質磁器。)

今回の研究会に参加してみて思ったこと

結果的に、セーヴルという狭い範囲だけで「磁器」を語ることはとても難しく、その場では解決しきれない質問もいくつかありました。

東洋陶磁学会でも、この「磁器」という言葉のもつ定義については深く議論が必要としているようで、将来的には東西問わず、「磁器とは〇〇だ」とはっきりといえるような定義の必要性を感じていると言われていたのが印象的でした。

(実際、とある質問者の意見に「カオリンの含有量〇%で、焼成温度が〇度というのは、東洋陶磁の世界では『磁器』と分類されない」というものも・・・。)

カリーニョとしても、今後も陶磁器を単なる「商品」としてみるのではなく、もっとアカデミックに、もっと深く掘り下げていきたいという想いが、より強まりました。

また上質なインプットに出会えたときには、このサイト上でも積極的にアウトプットしていこうと思います。

 

【このページの文章を書いた人】 加納亜美子(アミーゴ先生)

株式会社アリベ 代表取締役/『カリーニョ』代表 カリーニョを運営する三姉妹の末っ子。料理教室「一期会」を主宰し、洋食器輸入代理店でのセミナー講師、コラム執筆など多岐にわたり活動中。 通称:アミーゴ先生。これは、”世界中に沢山の友達が出来るような社交的な人になるように”と、父親が「アミーゴ(スペイン語で『友達』)から由来して名付けた「亜美子」にちなんだニックネーム。

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