映画『女王陛下のお気に入り』は、クイーンアンの最恐におぞましいブラックコメディ

2月から公開されている映画『女王陛下のお気に入り』(The Favourite)、皆さんご覧になられましたか?

時は1707年。イギリスのアン王女を巡る2人の女官の愛憎を描いた物語です。巨大予算の大河ドラマ的歴史映画などではなく、低予算で仕上げたいわゆる舞台的な群像劇(ぐんぞうげき)のため、主な登場人物はほぼこの3人で回っています。ちなみに群像劇とは、1人の主人公ではなく、今回のような登場人物3人全てが主人公的役割の物語のことです。本作は今年の英国アカデミー賞を総なめにしました。

 

公式ホームページ http://www.foxmovies-jp.com/Joouheika/

いやー。スゴかったですね。もう何がスゴイって、パンフレットの辛酸舐め子さんじゃないですけれど、ゾクゾクが止まりませんでしたね。一言でいうと、「おぞましいことこの上ない。」

(辛酸さんは「始終鳥肌もの」といっていたけれど、まあ似たようなもの)

トーホーシネマズでもジャンルが「コメディ」になってるけれど、これ、コメディを見るノリで行ってはいけませんでしたね。私は、映画『グレース・オブ・モナコ』(グレイス・ケリーモナコ王妃の美しく気品あふれる物語)のノリで行ったらとんだ目に遭いました。

 

詳しくは、私の器×教養コラム「陶磁器を彩る美しいモノたち」の中で紹介しようと思いますが、今回はサワリだけ。

 

おぞましい理由その①:ブラックユーモアに潜むエログロの世界

観た後で気づきました。これ、12禁なのです。ということで、若干エログロの世界が描かれていて、子どもが生まれて以降映画館では子ども映画しか見てなかった私にはそれらのシーンにゾクゾクが止まりませんでした。誰一人として死なないのに、このゾクゾク感は何なんでしょう。鬼才のランティモス監督の作品は、どれもこういったエログロ映画だそうで…もうそれ早く言ってよー。

 

おぞましい理由その②:魚眼レンズで撮る不安定な映像と、謎の「ブン…ブン…ブン…」という強烈に不気味な効果音

個性的な監督よろしく、お得意の①の世界観と、魚眼(広角)レンズで始終撮影されていて、要するに普通のカメラの視点ではないんです。ということは、魚眼にありがちな建物の焦点が普通と違っていて、それがまあ、普段いつも見ている風景ではないので、はっきりとはしない何となく不安定な感じがするんですよね。ゴッホの「アルルの部屋」が広角レンズで描かれていて、不安定で変な感覚に陥るような、あんな具合です。

それに加え、作中には謎の「ブン…」という不気味な音がリフレインし続けます。効果音?何なのか誰か教えてください。謎すぎて、この音が鳴るたびにゾクゾクします。

 

おぞましい理由その③:時代考証を無視!ジャコビアン様式をなぜに多用した!?ジャコビアンの「マーブル」とオセロゲームのようなモノクロ衣装

クイーンアン様式がたっぷり出てくると思いきや、出てきたのは…。

これは、教養コラムでお話しします。

 

おぞましい理由その④:時代考証を無視!その2ウースター窯のロイヤルリリーのティーカップが狂気の沙汰に

これは、教養コラムで話します。

おぞましい理由その⑤:まるで「アリスの不思議の国(ワンダーランド)」?へんてこで、気まぐれで、あべこべなワールド

 

これは、教養コラムで話します。

 

おぞましい理由その⑥:医学的無知

アン王女は美食の果てに通風になるのですが、作中痛風発作でアン王女がわめいている最中に、なんと痛みの緩和のため?かこともあろうにブランデーを飲ますのです。これ、わざと?

アン王女の通称、いわゆる「ブランディーアン」をブラックユーモアにしたのかもしれませんが、もう医療人としてはこの医学的無知にゾクゾクしましたね。ヘミングウェイの小説「武器よさらば」で妊婦に飲酒を積極的に勧めるシーンを読んだ時と同じような医学的無知のゾクゾク感を味わいました。

他にも、おぞましい理由は盛りだくさん。詳しくは教養コラムでお話ししましょう。

ある意味、これだけあれこれ語れるという映画は、いい映画、と言えるのかもしれません。

美しくもおぞましい映像美が気になる方、職場で女性同士の醜い争いを繰り広げている方、怖いもの見たさの方は、ぜひ映画『女王陛下のお気に入り』をご覧ください。そうでない方は、多少の覚悟をもって観に行くことをお勧めします。

 

【このページの文章を書いた人】 玄馬 絵美子(げんば えみこ)

株式会社アリベ 取締役 / マネーリテラシーアドバイザー / 薬剤師 カリーニョを運営する三姉妹の長女。薬局・病院で薬剤師として勤務後、現在、子育て中のアラフォー主婦。株式会社アリベでは受注・財務面、そしてカリーニョでは趣味で研究してきた古今東西の19世紀末~20世紀初頭の文化・様式・芸術の世界を紹介するコラム執筆を担当。
【これまでの実績】 全国のMR経験薬剤師が作る転職応援サイト『MRファーマシスト』にてマネーコラム連載。
新聞の文芸欄掲載多数。掲載作品はこちら(個人ブログ「私の読書遍歴」)

 

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