マリーアントワネット 秘密のベルサイユ

NHK「ドキュランドへようこそ」より
私の大好きなドキュメンタリーの秀作

 

ドキュランドへようこそ。いい番組です。海外番組の中から、教養や知的好奇心を満たしてくれる内容が粒ぞろい。NHK料金を払っている甲斐があると感じる番組です。今までのコラム執筆でも、タイタニック、イギリス王室もの…いろいろと参考にさせてもらいました。

その中で、最近面白かったのは、「マリーアントワネット 秘密のベルサイユ」ですね。何と嬉しいことに、再現ドラマつきだったのですよ。これは、見ていて贅沢でした。まるで「ベルサイユのばら」実写版ですよ。

NHK公式ホームページ「ドキュランドへようこそ 秘密のベルサイユ」はこちら

前編では、マリーアントワネットの離宮であるプチトリアノンの説明が細かくされていましたね。もともとルイ15世(マリーアントワネットの義父)の公娼だったポンパドゥール夫人の居宅だったのを、マリーアントワネットの代で改装したのですね。

建物は、外見はもう新古典様式そのものです。内装は、新古典様式とロココ様式が融合したような、いわゆる「ルイ16世様式」です。ルイ16世様式は、1910年代のタイタニック号最高級レストランでリバイバルされている、格式高い人気の様式です。

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マリーアントワネットは、ファッションなどに贅を尽くし、それがパリ市民の反感を買い、フランス革命の引き金となったことで有名です。しかし、ドラマでは、マリーアントワネットの浪費はフランスの負債のごく一部であったこと、わずか14歳で牧歌的なオーストリアから少し前まで敵国だったしきたりだらけのフランスに嫁いだという人身御供的な扱いなどから、アントワネットに同情的な目線で描かれていましたね。

また、ルイ16世が穏やかで女好きでなく、愛人をもたなかったことは、今なら「誠実で妻思いの旦那さん」になるはずでしょう。
しかしながら、本来ならルイ15世の様に、正妃は世継ぎや公的行事の為としての役割を果たし、ポンパドゥール夫人の様に、公娼はファッションリーダーや政治的なサポートをするといった役割分担があり、それはそれである種当時の社会では上手く循環していたのだということになります。マリーアントワネットは、自身のもともとの享楽的な性格と、ルイ16世の内向的な性格により、正妃というより公娼ないし愛人の立場に自らがなってしまったことが悲劇の発端ともいえるとのドラマの解釈に、「うーん、なるほど」と膝を打ちました。

歴史にif(もしも)はありませんが、もしマリーアントワネットがそういった享楽家でなかったら、フランス革命はもう少し先延ばしになっていたかもしれませんし、現在のイギリス王室の様に現在でも王室が残っていたかもしれません。

14歳の右も左もわからないマリーアントワネットが突然人質の様に異世界に連れ込まれて、その孤独と息苦しさからパーティーやファッション、賭博に逃げたのは同情の念を禁じえませんが、それでもティーンエイジで苦境に立ちながらも、立派に質実剛健に生きた王妃・女王は古今東西いるわけで、(例えば18歳で女王になったヴィクトリア女王もそうですね)彼女の享楽ぶりは環境のせいだけにはしたくないところですね。

ただ、それでもなお、マリーアントワネットは心優しく、だれかを欺いたり、陥れようとしたりという悪意を感じさせないところ、そしてたぐいまれなる美的センスで、今なお世界中の人々から愛されているのだと思います。

いやー、後編も楽しみですね。私はNHKの回し者でもなんでもありませんが、読者の皆さまもぜひご覧ください。

 

 

 

【このページの文章を書いた人】 玄馬 絵美子(げんば えみこ)

株式会社アリベ 取締役  / 薬剤師 カリーニョを運営する三姉妹の長女。薬局・病院で薬剤師として勤務後、現在、子育て中のアラフォー主婦。株式会社アリベでは受注・財務面、そしてカリーニョでは趣味で研究してきた東西の19世紀末~20世紀初頭の文化・様式・芸術の世界を紹介するコラム執筆を担当。 【これまでの実績】 全国のMR経験薬剤師が作る転職応援サイト『MRファーマシスト』にてマネーコラム連載。 新聞の文芸欄掲載多数。掲載作品はこちら(個人ブログ「私の読書遍歴」)

 

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