【第21回】超簡単!ベルエポック それは「19世紀末パリの楽園」

陶磁器を彩る美しいモノたち
1889年パリ万博頃から始めるフランスの楽園
ウィーンの世紀末芸術とは表裏一体!歓喜の世紀末

 

前回、「カリーニョの知恵袋」コラムでミュシャ展のお話をしました。

今回はその続きです。

ミュシャの話をするとき、「ベルエポック」というキーワードが出てきます。ミュシャの絵は、このベルエポックを象徴する絵だからです。

ベルエポック(Belle epoque、美しい時代・古き良き時代)とは、19世紀末~20世紀初頭(1914年の第一次世界大戦以前)パリが反映した華やかな文化のことを指します。
いわゆる、「華の都 パリ」というイメージの時代ですね。

 

ではどうして、パリは19世紀末に「華の都」となったのでしょう?
それは、いくつか理由がありますが、まず一つはパリ大改造でしょう。

大改造によって、治安や公衆衛生が劇的に改善し、産業革命による機械化もあって、人々にゆとりが生まれます。そうなると、どうなるか?みんな買い物や娯楽など、やはり楽しいことがしたくなりますよね。ということで、特権階級(貴族)だけでなく、大衆(一般市民)がショッピング・観劇・グルメなどのいわゆる「消費文化」を楽しむようになるのです。

「暮らせること自体が、うっとりするほど素晴らしいものになった。金はなくとも、生活は苦しいにいしても、パリにいるだけで生きる喜びをかんじたのである」(『もっと知りたいミュシャ 生涯と作品』東京美術より)

いや、この感覚って大事ですよ。こういうゆとり・余裕が大衆の文化を呼びますからね。ということで、ベルエポックは、ある意味初めて、貴族や教会発祥でない一般庶民初の文化の隆興(りゅうこう)だともいえると思います。

ベルエポックを象徴する「ムーランルージュ」
本場のフレンチカンカンが見られる老舗キャバレー(日本のキャバレーを想像してはいけません。ミュージックホールです)

ムーランルージュ公式日本語サイトはこちら

今までコラムでもたびたび取り上げられてきました、1889年パリ万博も、ベルエポックを象徴するものです。ムーランルージュもこの年に開業しましたし、エッフェル塔もこの1889年パリ万博に合わせて作られました。

また、ベルエポックを象徴するものとして、大衆のスポーツも挙げられます。テニス、ゴルフ、アイススケート、サイクリングなど、かつて一部の特権階級だけが楽しむものでしたが、1900年パリ万博に合わせて第二回近代オリンピックが開かれ、スポーツもまた一般人が楽しむことの出来るものに変わってきたのです。

私がコラムで何度も19世紀末~20世紀初頭が好きな理由として、「現代人と同じ感覚になる、最も古い時代の人々だから」、つまり「19世紀末からようやく現代人の感覚に近くなるから」という理由が、ここにあります。

それはなぜか。ウィーンの19世紀の世紀末である「世紀末芸術」のコラムでも申し上げたことが関連します。

 

 

世紀末を広い視点で俯瞰的(ふかんてき)に見ていくと、この時期が長い長い人類の歴史の中の大転換期であることに気が付きます。

この時期は第二次産業革命の時期で、人類はついに電気を手に入れます。電気のあるなしが、どれほど人間の文明にとって大きなものであるか、現代を生きる私たちは感じることが出来るでしょう。電気が出来、電気器具、つまり家電が家の中に進出してきます。鉄道網も発達し、輸送がそれまでとは比べ物にならないくらいのスピードになります。印刷技術も向上し、ジャーナリズムも発達してくる。ブルジョア階級(貴族社会)は風前の灯火、女性はついにコルセットを脱ぎだした。とんでもない変化です。インターネットとか、AIとかの比じゃない劇的な社会変化が、この時期に起こっているわけです。

そういったものに、否が応でも人類はそれを受け入れていくしかないわけなのですよ。時代の波に飲み込まれてしまう焦燥感、機械が人間にとって代わる恐怖、これらの新しい文明は人間を豊かにするのか、それとも破滅の道に導くのか、わからない。今までとは全く違う世の中になっていくぬぐい切れない不安感…そういうものが一気に噴出するわけなのです。

それが、世紀末芸術にも表れていると思うのですよ。世紀末芸術が、単純に無垢で、純粋で明るいというわけでないのが、こういうところから出てきているんじゃないかと私は思いますね。

でもね。新しい革新的技術を「これからどうなるんだろう…分かんないや…恐ろしい…ゾゾゾッ」と怖がる人もいれば、「これからどうなるんだろう…分かんないや…でも、なんかいい世の中になるんじゃね?うわー、ワクワク」という人も世の中にはいるもので、この「どうなるんだろう…ゾゾゾ」派が、ウィーンの「世紀末芸術」で、「どうなるんだろう…ワクワク」派が、パリの「ベルエポック」だと考えると、とてもイメージしやすいと思います

こうなると、同じ出来事でも、それをどうとらえるか、どのように色を付けるかで、文化の色合いが全然違ったものになることが、よくお分かりいただけるでしょう。

このベルエポックは、陶磁器文化ともかかわりが深いですから、ぜひとも覚えておいてくださいね。

【このページの文章を書いた人】 玄馬 絵美子(げんば えみこ)

株式会社アリベ 取締役 / 薬剤師 カリーニョを運営する三姉妹の長女。薬局・病院で薬剤師として勤務後、現在、子育て中のアラフォー主婦。株式会社アリベでは受注・財務面、そしてカリーニョでは趣味で研究してきた古今東西の19世紀~20世紀初頭の文化・様式・芸術の世界を紹介するコラム執筆を担当。 【これまでの実績】 全国のMR経験薬剤師が作る転職応援サイト『MRファーマシスト』にてマネーコラム連載。 新聞の文芸欄掲載多数。掲載作品はこちら(個人ブログ「私の読書遍歴」)

 

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