【第13回】映画「タイタニック」回想 映画のここがすごい(1/6)

陶磁器を彩る美しいモノたち
筆者がベスト10に入れる映画「タイタニック」
その魅力と、上映当時の時代背景に迫ります

 

タイタニック号の悲劇。それは人類の進化へのあくなき追求に一石を投じ、20世紀のテクノロジーに警鐘を鳴らした大きな事件です。タイタニック号のことをよく知っておくことは、幅広い教養文化を学ぶうえでも必要なことだと私は考えています。
また、ヴィクトリア女王の息子の時代であるエドワード朝を考えるとき、エドワード朝の粋(すい)を結集させたタイタニック号の設備や風俗文化はとても参考になります。今回、「陶磁器を彩る美しいモノたち」コラムでタイタニック号についてのお話を6回シリーズでお伝えしようと思います。前半は、大ヒット映画「タイタニック」から。どうぞ、最後までお付き合いください。

「タイタニック」小話 ニュージーランドでの思い出

 

20年前に世界中で大ヒットした映画「タイタニック」(ジェームス・キャメロン監督作品)、あなたは観たことがありますか?私も、当時観ました。もうね、すごくハマりましたよ。映画館で4回も同じ映画を見たのは後にも先にもこの作品だけです。

ヒロインローズの登場シーンの衣装は、私のお気に入りの一つ。ストライプとボーダーを組み合わせた紫のスーツ。ややハイウエストでS字型の美しい蜂腰(ほうよう)シルエット、スカートの切り替え、ブルーでなく紫色というモダンな色など、お気に入りポイントは数え切れません。

3回は日本で、1回は修学旅行のファームステイ中、ニュージーランドの片田舎の小さな映画館で観ました。夜の6時から上映だったので、ステイ先で早い夕ご飯を済ませてから映画館まで送ってくれました。
切符売り場でパンフレットを買いたい、というとパンフレットはなく、(パンフレットは日本だけの文化らしいですね)映画館のタイタニックのチラシの白黒コピーをくれました。30席ほどの小さな劇場の中は、私たちの他には、数組の若年~中高年夫婦のみ。あちらの人々は、上映中も平気で映画について小声で語り合ったり、クスクス笑ったり泣いたりキスをしていて、そのおおらかさにビックリ。よい思い出の一夜です。

タイタニック号の悲劇とは?

ご存じない方に簡単に説明しますと、いわゆる「タイタニック号の悲劇」というのは、今から100年ほど前の1912年、夢の豪華客船タイタニック号がイギリスからアメリカのニューヨークまでの大西洋処女航海中に氷山に衝突(注:現在温暖化で大西洋に氷山はありません)、沈没し、乗員乗客約2200名のうち約1500名が命を落とす当時史上最大の客船海難事故のことです。

「タイタニック」の映画が大ヒットした1997年というのは、映画や雑誌、マンガ、CDなどのアナログメディアの売り上げが全世界的にピークとなっていた時代で、そりゃあもう、当時の盛り上がりようは現代の比じゃなかったです。

まだ携帯電話のiモード(メール・インターネット機能)もなく、携帯は電話だけの機能で、一人一台の時代ではありませんでした。インターネットは本当に出始めたばかりで、当時は企業や公的な公式ホームページばかり。ブログとか、ネットショッピングなどほとんどない時代でした。
ケータイとインターネットの台頭とともに、消費者の関心が完全に奪われ、先述のアナログメディアが右肩下がりとなったのは皆さんの知るところ。

映画「タイタニック」はなぜすごいのか

その①投資予算とディティールがすごい

さて、映画「タイタニック」です。

当時最新のCGを使って仕上げていますが、それでも今から見ればほとんどがアナログ撮影。今のなんでもかんでもオールCGの時代(特に最近のアクションシーンのほぼ丸々CGは、観ていてて個人的に辛いものがある)と比べると、驚くほどセットに巨額の投資をしています。映画予算は、当時史上最高額の240億円。半端ないですね。細部の小道具にまで本当に手が込んでいて、映画予算万年不足気味の現代には到底できないリアル感には目を見張るばかりです。

細部まで徹底的にこだわったセットと小道具。曲木の籐椅子は当時の流行ですが、中央の上流階級の女性(ヒロイン・ローズの母ルース)の衣装は、一つ前の世代のヴィクトリア風で、どちらかというとやや古風。封建的なイメージを演出しています。

さらに、限りなく史実に対し忠実にあるように、分単位の綿密なタイムスケジュールで物語は進行しています。タイタニック号の船内で、だれが、いつ、どこにいて何を話したのか。何一つ、タイタニック号沈没までの事件を脚色はしないように、徹底的にリアリティーにこだわっています。

巨額の投資をしてもサッパリ当たらない映画もある中で、とことんこだわりを見せつつも、大衆の趣向を考えた、王道のロミオとジュリエットストーリーに仕立て上げ、更に多くの観客にたいして納得のいくような綿密な編集をすることで、結果的に芸術的にも、興業的にも両方成功します。そこがまずスゴイところです。

 

その②編集がすごい

私の好きなローズのイエローベージュのドレス。この色にずっと憧れていて、結婚式の参列用ドレスはこの色と同じイエローベージュで同じようにハイウエストのドレスを一着、求めました。靴も併せてイエローベージュ。結婚式用ドレスはこの一着しかありませんが、お気に入りです。このシーンも大胆な編集が施されています。

編集をものすごいかけているんですよ、この作品。なんとラストシーンまで、全然違うパターンまで撮影している。でも、カットしたシーンと残したシーンを比べてみると、確かに完成版に残っているほうが、観客として納得できる。シーンをたくさんカットしたことで、細かな矛盾も実は結構あるけれど、不思議に観ていて腑に落ちるんですね。

よくあるじゃないですか、どうしてそんな展開?とか、なんでこんなラストなの?とか、なんでこの人、こんな行動に出るの?とか。そういうのが、ほとんどない。ないように作ってある。なんだかよくわからないような展開になる原因の一つに、映画はチーム活動ですから、大勢のスタッフ同士の意見のすり合わせがうまくいってないパターンですね、それがありますが、多分、うまく編集できたというのは、それを本当にうまく取りまとめたんじゃないかと勝手に推測しています。多少の矛盾は目をつぶってでも、大胆な編集を上手く施せたっていうのは、なかなかできる技じゃないですよ。脚本から何から全てを取り仕切ったジェームス・キャメロン監督の大変な意気込みを感じさせる映画です。

やっぱり、興味本位で作っていないからなんだと思います。キャメロン監督が、歴史と海洋探検に深い造詣があって、その上で死者に対する敬虔な気持ちをもって、我々人類の教訓としてモチーフ(題材)を真剣にあつかっている。それでいて、冷静に興業的な部分も考えている。このバランスは、難しいだけに、成功できたことは本当に素晴らしいと思います。

次回は、映画「タイタニック」の私がすごいと思う理由について、さらに深堀します。

 

【このページの文章を書いた人】 玄馬 絵美子(げんば えみこ)

株式会社アリベ 取締役 / 薬剤師 カリーニョを運営する三姉妹の長女。薬局・病院で薬剤師として勤務後、現在、子育て中のアラフォー主婦。株式会社アリベでは受注・財務面、そしてカリーニョでは趣味で研究してきた古今東西の19世紀~20世紀初頭の文化・様式・芸術の世界を紹介するコラム執筆を担当。 【これまでの実績】 全国のMR経験薬剤師が作る転職応援サイト『MRファーマシスト』にてマネーコラム連載。 新聞の文芸欄掲載多数。掲載作品はこちら(個人ブログ「私の読書遍歴」)

 

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