【第11回】超簡単!ドビュッシー パリが生んだ20世紀の新しい音楽

陶磁器を彩る美しいモノたち
ユニークなビジョンと感性で20世紀の扉を開いたドビュッシー

最近は美術やドラマ・映画・文学の話ばかりでしたので、音楽の話をしましょう。文化を語る上では、音楽もまた、切り離すことのできない分野です。

EMIKO
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これまで美術様式を年代ごとに、ゴシック、バロック、ロココときて、新古典で美術の頂点を極めたお話をしてきました。そして、頂点を極めた後はもう「破る」しかない、そうして生まれた「世紀末芸術」のお話もしてきました。今回のドビュッシー(1862~2018。去年は没後100周年)は、まさにその「世紀末芸術」やフランスの「印象派」の時代にドンピシャな人物です。

ドビュッシーの特徴は、何といっても甘く切なく、幻想的で繊細な旋律です。誰もが知るピアノの名曲「月の光」「亜麻色の髪の乙女」を生み出しました。私は、アンニュイで魂を揺さぶられるような、そしてどことなく郷愁感漂うメロディーである「亜麻色の髪の乙女」が一番ドビュッシーの中では個人的に好きですね。ドビュッシーというより、音楽の中でもベスト10に入るくらい好きな曲ですよ。メロディーが、「タラタ・タラタ・タッタッタ~」(ちなみにこれは、ラデツキー行進曲)などのように歌える旋律ではなく、まるで印象派の絵画のような幻想的な輪郭を持っているのも、ドビュッシーの特徴です。

 

音楽の「印象派」と呼ばれる 常識破りの音楽

 

しかし、ドビュッシーの一番の功績といえるもの、それは、印象派の画家が「見たものそのままに写実的に描く」というのを破ったように、伝統的な西洋音楽の和声法から逸脱した(違反した)和音を作り出したことです。新しい音楽の響きへの追及、音色の試みともいえるべきその挑戦は、まさに、20世紀の新しい音楽の扉を開いたのでした。

 

きっかけはパリ万博
印象派の画家たちがジャポニズムに魅了されたように
ジャワ民族音楽に衝撃を受けたドビュッシー

それはやはり、というべきか、1889年のパリの万国博覧会が、ドビュッシーを大きく変えました。1889年のパリ万博の一番の出来事と言えば何といってもエッフェル塔の建設ですが、ドビュッシーはそこでインドネシアのガムラン(ジャワ民族音楽)に触れ、衝撃を受けます。そこには西洋の伝統的な規則など無縁の世界が広がっていました。なんだ、規則を守らない音楽もこの世にはあるのだ、とドビュッシーは勇気づけられたのですね。以後、自分の信念に従って「自分が美しい」と思った旋律を素直に創作していきます。

その第一歩が1894年の「牧神の午後への前奏曲」です。古典的技法の「メロディーを発展させていく」という技法を封印し、メロディーは変えずに和音を変えることで曲に色をつけていくという手法を編み出します。さながら、従来行っていた絵の具を混ぜる伝統的方法を封印し、絵の具の色をそのまま置いていくことで鮮やかな色を生み出した「色彩分割」法を編み出した印象派の画家のようです

実際、ドビュッシーは「花の都」となったパリのカフェで、ボードレールやルノワール、モネなどの文人墨客と交流を交わしています。きっと、「今までの伝統をぶちやぶろう」という気概を、他分野の芸術家からも受けたのでしょうね。

 

1889年のパリ万博で
生れた日本の陶磁器メーカー

ちなみに、この1889年(明治22年)のパリ万博で衝撃を受けた陶磁器関係の人物がいます。
そうです、日本の洋食器最大手メーカーのノリタケ創業者、森村市左衛門です。市左衛門はパリ万博に視察に訪れ、そこに展示されていた美しく絵付けされたヨーロッパの磁器に魅了され、「これから洋食器の時代がやってくる」と一念発起し、ノリタケを興していきます。

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ノリタケの創業のきっかけと、20世紀音楽の元祖ともいうべきドビュッシーの音楽革命のきっかけの舞台が同じ1889年のパリ万博だなんて、なんだか鳥肌がたってくるような話です。ドビュッシーと、森村市左衛門が、互いに自分が切り開いていこうとする新しい世界に向けて思案にふけりながら、パリ万博ですれ違ったかもしれないーーそんな想像が出来るのが、文化と歴史を探求していく一番の面白みですね。 このように、私が小さい頃からこの19世紀末~20世紀初頭が好きなのも、これらの文化が全方向型に非常に盛り上がった時代だからでもあるのです。

 

【このページの文章を書いた人】 玄馬 絵美子(げんば えみこ)

株式会社アリベ 取締役 / 薬剤師 カリーニョを運営する三姉妹の長女。薬局・病院で薬剤師として勤務後、現在、子育て中のアラフォー主婦。株式会社アリベでは受注・財務面、そしてカリーニョでは趣味で研究してきた古今東西の19世紀~20世紀初頭の文化・様式・芸術の世界を紹介するコラム執筆を担当。 【これまでの実績】 全国のMR経験薬剤師が作る転職応援サイト『MRファーマシスト』にてマネーコラム連載。 新聞の文芸欄掲載多数。掲載作品はこちら(個人ブログ「私の読書遍歴」)

 

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