「美の壺」昭和レトロな食器

古くて新しい昭和レトロの食卓
ビタミンカラーで花柄が満開

4月に放送された、NHKの『美の壺 昭和レトロの食卓』。

懐かしき昭和の器の数々が紹介されていました。

 

 

EMIKO
EMIKO

恐らく私の世代が、「昭和をはっきりと記憶する最後の世代」だと思います。カリーニョ代表加納は、たぶん昭和の記憶はほぼないといっていいでしょう。そういう意味では、昭和のまとったあの独特の空気感、なぜか郷愁を誘うあのデザインの数々を、実生活で覚えているという最後の世代になるのだろうな、としみじみ思います。

 

昭和の、器をはじめとするデザイン、とても好きです。
昭和の器の特徴といえば、なんといっても70年大流行のビタミンカラー。

鮮やかなオレンジ・きみどり・赤・黄・白、そしてプラスチックバケツのあの水色、この不透明な6色カラーが基本でしたね。当時の幼い私は、プラスチックの場合となると、パステルカラーや透明水彩のような色が好みではありましたが…。

そして私は往年女優であり、モナコ王妃でもあったグレイス・ケリーが非常に好きなのですが、彼女が身にまとった70年代のビビットなビタミンカラーの衣装の数々も、とっても元気がでる配色・デザインで好きです。最近にはなかなかない色合いですね。

 

そして、何といっても空前の花柄大フィーバーですよ。

食器、ナベ、お玉、炊飯器(当時の呼び名は、「(炊飯)ジャー」)に魔法ビン、トースターに、醤油さしに、箸立てにつまようじ入れ…とにかく食卓のありとあらゆるモノがですね、昭和30~40年代に夢見るお花畑と化したのです。すさまじい光景です。(昭和50~60年代になると、ちょっと飽きられて陰りが出てたというのが、私の実感)

『美の壺』では、工業デザイナーのパイオニアでもある坂下清さんが出演されていて、魔法ビン(この言い方がもうすでに昭和!)に「欧米の食卓で花を飾っているように」京友禅作家に花柄を描いてもらってデザインしたのが、昭和花柄ブームの始まりだそうです。

坂下清さんと開発した花柄魔法ビン第一号。京友禅の着物のような、あでやかで写実的な花柄デザインです。今見ても、最高に美しい。当時はまとめて沸かしたお湯をこの魔法ビンに入れて、お茶タイムに使用していました。持ち運びもしやすく、エコな商品です。
写真は、ヤフーニュースの「花柄の魔法瓶登場から50年、高度成長期の花柄はなぜ流行したのか」の記事より。

 

そして、昭和30年代に団地が出来ると、ちゃぶ台からダイニングテーブルといった「食卓の洋風化」が起こり、洋食器が求められるようになるのですね。そこに目を付けたノリタケは、主に輸出の多かった洋食器を、国内向けに製造販売していくのです。

月額500円の頒布会(はんぷかい)で「若杉」を発売するや否や、これがまた大ヒット!人気の絵柄は年間10万セットも売れるという、昭和の主婦たちの熱狂的支持を得ることになります。

ノリタケ「若杉」昭和34年皇太子成婚記念ディナーセット。
月500円の10回払いで、18種58点が揃う。1回目はカップ&ソーサー5客組。2回目は27㎝ディナープレート1枚とティースプーン5本セット。物のない時代に毎月届くディナーセットは、昭和の主婦たちをきっと、胸躍らせたことでしょう。昭和レトロカラーの代表であるきみどりのデザインですが、北欧調でもあり、現代でも通じるかわいらしい作品です。

 

しかしながら、平成に入ると、当時はやっぱり昭和のデザインというのは、とくにあのビタミンカラーの不透明プラスチックや花柄は、「ダサい」象徴みたいになるわけですよ。

そして、シンプルでモノクロな、「無印良品」や「コムサ」や「ユニクロ」のような柄のないものが良しとされてる雰囲気になって、以前のデザインやカラーコーディネイトが軒並み否定されるのです。1990年代はどちらかというと、とにかく機械的で、モノトーンでモダンなデザインが流行して、それこそがカッコいい、というかんじでしたから、今のような古民家カフェだとか、100均にあるようなクラシカルでオシャレなデザインもなかったですよね。

しかしです。私の実感としては、昭和レトロはとても素晴らしいコーディネイトです。ただ、当時あの花柄がアクセントであればよかったのですが、雨後の筍のようにメーカーのみんなが皆、花柄にしちゃったものだから、どこの家庭ももれなくデザインがうるさくなっちゃって、昭和柄が「ダサさの極み」みたいなことになってしまったのですね。残念です。モノトーンのビタミンカラーの小物の中に、アクセントとして花柄デザインを入れると、今でもすこぶる美しい食卓デザインになりますよ。

私も、昭和レトロなデザインの食卓グッズはいくつかありますが、どれもお気に入りです。特に気に入っているのは、花柄模様のガラス製調理用ボウルです。こんなものはもう、今はないですね。

 

あの時代のカラーやデザインは、当時の世界的デザイン流行の潮流に乗っていただけであるのに、どこか伸び行く昭和の活気を具現化したような、そんな空気を身にまとっていて、今にはない「何とものんきな活力」のオーラがあります。

現代の「ベージュや白や無地を基調としたすっきとした住居デザイン」は、忙しい毎日の中で「ゴチャゴチャ感でイライラッ」ということもなく、私は現代社会を生きる多くの人々に合ったスタイルだと感じます。ただ、昭和レトロの小物や、カリーニョで紹介している華やかな食器たちがちょっとでもあると、当時の「何とものんきな活力」のエネルギーがもらえて、どことなく私はホッとするのです。

 

 

【このページの文章を書いた人】
玄馬 絵美子(げんば えみこ)

株式会社アリベ 取締役  / 薬剤師
カリーニョを運営する三姉妹の長女。薬局・病院で薬剤師として勤務後、現在、子育て中のアラフォー主婦。株式会社アリベでは受注・財務面、そしてカリーニョでは趣味で研究してきた東西の19世紀末~20世紀初頭の文化・様式・芸術の世界を紹介するコラム執筆を担当。
【これまでの実績】
全国のMR経験薬剤師が作る転職応援サイト『MRファーマシスト』にてマネーコラム連載。
新聞の文芸欄掲載多数。掲載作品はこちら(個人ブログ「私の読書遍歴」)

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