【第7回】超簡単!新古典様式は古代ギリシア・ローマの再来

陶磁器を彩る美しいモノたち
新古典はジョサイア・ウェッジウッドの生きた時代
歴史的で、知的で、理性的な様式

 

本コラム「陶磁器を彩る美しいモノたち」では、これまでゴシック、バロック、ロココ様式についてそれぞれお話してきました。

 

今回は、新古典様式です。時代の流れとしては、ゴシック、バロック、ロココ、の次ですから何も考えずこのコラムの登場順番でそのまんま覚えてしまいましょう。
新古典様式は、ネオクラシカルスタイル(Neo classical style)とも言います。ネオ(新)クラシカル(古典の)スタイル(様式)ですから、直訳ですね。何も難しいことはありません。「これは、ネオクラシカルスタイルだ」と書いてあったら「ああ、なんだ、新古典様式のコトね」と思いましょう。

 

新古典様式を一言でいうと、「古代ギリシア・ローマ様式のリバイバル(再来)」です。

これ以上簡単には説明できません。

 

EMIKO
EMIKO

ロココの回でも申しましたが、あまりに1970年代の少女マンガのようにお目々にキラキラのお星さまとフリフリレースがいっぱいのベルばら調が「ちょっと、この絵は行き過ぎだよね…」とばかりに、1980年代になって突如シンプルで硬派な絵柄の『バナナフィッシュ』(吉田秋生)が登場!という変貌ぶりと同じような現象が、ロココ→新古典にも現れたわけなのですね。

 

ベルサイユのばら 池田理代子 1972~1973

バナナフィッシュ 吉田秋生 1985~1994

つまり、フランス革命によって、マリーアントワネットが断頭台の露と消えたと同時に、リボンにフリフリレースで遊び惚けていたようなロココ様式が終焉を迎え、我に返った上流階級の人々は、「今まで羽目はずしてはしゃぎすぎちゃったらから、ちょっと頭冷やして受験勉強頑張ろう」とばかりに、古代ローマ・ギリシアや古代エジプトなどの歴史的で知的な様に揺り戻ったのです。

なぜ、歴史的で知的に戻ったかというと、フランス革命でナポレオンが台頭し、ナポレオン軍がエジプトやイタリアに赴いたこと、そしてイタリアのポンペイ遺跡やエジプトの遺跡の発掘が大流行したことに由来します。ナポレオン帝政の時代と新古典の時代が重なることから、新古典様式のことを、「帝政(アンピールEmpire)様式」とも言います。アンピールとはEmpire、英語のエンパイア、皇帝のことですね。そのままです。

 

EMIKO
EMIKO

ここで、実際の肖像画を見れば一発でその様式の変貌ぶりがわかります。
ロココを象徴するマリーアントワネット、新古典を象徴するレカミエ夫人で比べてみましょう。

ヴィジェ・ルブラン「マリーアントワネット」1779年ヴェルサイユ宮殿蔵

 

ジャック=ルイ・ダヴィッド「レカミエ夫人」1800年ルーブル美術館蔵

どうです?一目瞭然でしょう。

フリフリレースで夢見るようなマリーアントワネットの派手すぎる服装に比べ、レミニカ夫人のすっきりとしてシンプル、知的で歴史的な雰囲気を醸し出している様子がよくわかると思います。たった20年でここまでの変貌ぶり、今の日本のファッションブームでもなかなかできないワザです。この「マリーアントワネット」が描かれた10年後(1789年)にフランス革命がおこり、1793年にマリーアントワネットが断頭台に消えたという20年間が、どれほどまでに激動だったかが、この服装を見ただけでもうかがい知ることができます。

 

新古典様式の特徴的なモチーフはパルメット、メダイヨン、ガーランド、フェストゥーン、グロテスク、ペイズリー、ロータスなど。わかりやすいロココのリボン、レース、ストライプ、と比べると、名前だけでも知的で小難しそうな感じがしますね。モチーフの詳しい説明はまたこのコラムでいずれすることにしましょう。

 

洋食器で新古典様式を説明するとしたら、何といってもそれはウェッジウッドでしょう。創業者ジョサイア・ウェッジウッドの生きた時代が、そのまま新古典の時代で、作品づくりにはそれが反映されているからです。

ウェッジウッドのジャスパーの絵柄が、主に古代ギリシア・ローマを模しているのもそれが理由です。

 

ジョサイアの最高傑作「ポーランドの壷」大英博物館蔵

私は、ジョサイアや、ビジネスパートナーであったベントレーのもつ、知的で理性的な性格が、その当時の流行であった新古典様式とタイミングよくマッチしていたのも、ウェッジウッドが飛躍した原因の一つではないか、と思っています。

新古典様式をふんだんに取り入れたウェッジウッドの代表作は、こちらのページでレンタルすることが出来ます。(ログイン及び有料会員登録が必要です)

さて、最後におさらいです。ゴシック、バロック、ロココ、新古典を熟語でそれぞれイメージしてみましょう。

ゴシック:厳格
バロック:躍動
ロココ:耽美
新古典:知的

このイメージでいってまず大きく間違えることはないと思います。
このように、それぞれの様式をひとことイメージや、熟語で頭に入れておくと、美術や建築、文化を見たときにとても便利ですよ。もちろん食器も!

 

【このページの文章を書いた人】 玄馬 絵美子(げんば えみこ)

株式会社アリベ 取締役 / マネーリテラシーアドバイザー / 薬剤師 カリーニョを運営する三姉妹の長女。薬局・病院で薬剤師として勤務後、現在、子育て中のアラフォー主婦。株式会社アリベでは受注・財務面、そしてカリーニョでは趣味で研究してきた古今東西の19世紀末~20世紀初頭の文化・様式・芸術の世界を紹介するコラム執筆を担当。 【これまでの実績】 全国のMR経験薬剤師が作る転職応援サイト『MRファーマシスト』にてマネーコラム連載。 新聞の文芸欄掲載多数。掲載作品はこちら(個人ブログ「私の読書遍歴」)

 

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